東電子会社に業務停止命令、電話勧誘販売規制について
2021/07/05 消費者取引関連法務, 特定商取引法, その他
はじめに
電気やガスの電話勧誘に際して一律に「安くなる」などと告知していたとして消費者庁は25日、東電の子会社「東京電力エナジーパートナー」(中央区)に一部業務停止命令6ヶ月を出していたことがわかりました。
勧誘目的も明示していなかったとのことです。今回は特定商取引法が規制する電話勧誘販売について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、東電エナジーパートナーは複数の業者に電話勧誘業務を委託し、電気やガスの契約を他社から切り替えるよう消費者に勧誘していたとされます。その際、そのような事実はないにもかかわらず「一律で年間1200円安くなる」などと虚偽の説明をし、あたかも同社とガスと電気の両方の契約を締結すれば割引を受けられるかのように告げていたとのことです。
実際には同社料金プランのほうが既に契約済みの他社プランよりも一般的に割高になっていたとされます。同社は昨年9月にも経産省電力・ガス取引監視等委員会から業務改善命令を受けておりました。
特定商取引法による規制
特定商取引法2条3項によりますと、事業者が消費者に電話をかけ、または特定の方法により電話をかけさせ、その電話において行う勧誘により、消費者から契約の申し込みを受け販売することを電話勧誘販売といいます。一旦電話を切ったあとの申込みであっても、それが電話勧誘によるものであれば該当します。
なお本条による規制は事業者と国内消費者との間に適用されるものであって、事業者同士の取引、国外の人に対する取引、国や自治体が行う取引、事業者がその従業員に対して行う取引、株式会社以外が発行する新聞の勧誘、金商法に基づき登録を受けた業者が行う取引等には適用されません(26条)。
電話勧誘販売に対する行政規制
事業者が電話勧誘販売を行う際には、事業者は勧誘に先立って相手方消費者に対し、
・事業者の名称
・勧誘者の氏名
・勧誘の目的
・販売しようとする商品の種類
を明示する必要があります(16条)。相手方が断った場合には、さらに勧誘を継続することや再勧誘が禁止されます(17条)。
契約が成立した場合には事業者は、
・商品の種類
・価格
・代金支払い時期と方法
・契約解除に関する事項
・事業者の名称、住所、電話番号
・契約担当者の氏名
・契約締結年月日
・事業者の責任
等を記載した書面の交付が義務付けられます(18条、19条)。
この書面には消費者が熟読すべきことやクーリングオフに関する事項については赤字での表示、また文字の大きさも官報と同程度以上にすべきことなど注意点が存在します。
禁止行為
電話勧誘販売に際しては、事業者は商品の種類、性能、品質等について、また販売価格、支払時期、方法、商品の引き渡し時期、契約解除に関する事項や消費者の判断に影響をおよぼすこととなる重要な事項について事実と異なることを告げてはならないとされております(21条1項)。
また故意に事実を告げないことや、契約させるため、または契約解除を妨げるために相手方を威迫して困惑させることも同様に禁止されております(同2項、3項)。
違反した場合には業務改善指示(22条)や業務停止命令(23条)、業務禁止命令(同条の2)といった行政処分の他、罰則として3年以下の懲役、300万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されております(70条1号)。
コメント
本件で消費者庁の発表によりますと、東電エナジーパートナーは電話勧誘業者に委託し、ガスや電気の契約を他社から変更させる勧誘に際して事実と異なり一律に安くなるかのように告げていたとされます。また電気契約をしている顧客に勧誘目的も告げずにガスの契約を勧めていたとのことです。消費者庁は業務の一部停止命令と再発防止、コンプライアンス体制の構築を指示しております。
以上のように特定商取引法では電話勧誘に際してはかなり厳格な規制を置いており、平成28年改正では業務禁止命令が新設されております。業務停止を受けた悪質業者が新たに法人を設立して同様の違法行為を繰り返すことを防ぐことが目的です。近年こういった違反事例は電話営業等を業者に外注した際に多く生じております。他社に営業委託を行っている場合はどのように勧誘しているかを今一度確認しなおしておくことが重要と言えるでしょう。
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