独占禁止法コンプライアンスまとめ
2017/08/04 コンプライアンス, 下請法, 独占禁止法
はじめに
現在、多くの業界に事業者団体が存在し、情報の交換や事業者団体の会員に対して教育をするなど、経済社会に大きな貢献をしています。しかし、公正取引委員会が、「直近10年間に公正取引委員会が事業者団体に対して排除措置命令又は警告を行った事件は29件(中略)と依然として数多く存在するとともに,事業者による価格カルテル事件において,事業者団体の会合の場が利用されるなどの事例もみられるところである」と発表するように、独占禁止法違反の例は少なくありません。
そこで、事業者団体やそこに属する企業が、自主的に独占禁止法に関するコンプライアンスに取り組むことが必要となってきます。
独占禁止法とは?
◎独占禁止法の目的
現在の経済社会では、事業者が自らの扱う商品やサービスを、その市場の中で提供しています。そして、市場が適正に機能していれば、事業者は創意工夫することで同市場内の他の事業者と競争を行い、消費者はニーズに従って事業者から商品やサービスを買うことができます。独占禁止法は、私的独占や不当な取引制限、不公正な取引方法を制限することで、市場を適切に機能させて公正かつ自由な競争を促進し、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進すること」(独占禁止法1条)を目的として定められました。
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
独占禁止法の概要
◎独占禁止法の規制内容
独占禁止法の規制
私的独占は、独占禁止法3条前段で制限しています。
私的独占には2種類あり、1つ目は「排除型私的独占」といって、事業者が単独又は他の事業者と共同して、不当な低価格販売などの手段を用いて、競争相手を市場から排除したり、新規参入者を妨害して市場を独占しようとする行為です。例えば、競争者と競合する販売地域又は顧客だけに安い価格で商品販売をする行為や、他の事業者の事業活動を妨害する行為が、排除行為となる可能性があります。
2つ目は「支配型私的独占」といい、事業者が単独又は他の事業者と共同して株式取得などにより、他の事業者の事業活動に制約を与えて、市場を支配しようとする行為です。例えば、市場で強い価格決定力を持つ企業が、自社の商品の再販売価格を指示して、その小売価格を統一することで、他の会社も同じ価格設定をさせることで、市場での価格を支配することが挙げられます。
排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針
不当な取引制限として、「カルテル」と「入札談合」が独占禁止法3条後段で規制されています。
「カルテル」とは、複数社が話し合ったりして連絡を取り合い、本来、各企業がそれぞれ決めるべき商品の価格や生産数量などを共同で取り決めることをいいます。カルテルによって、競争がなくなり、高い価格が設定されると、消費者は価格によって商品を選ぶことができなくなるばかりか、本来ならば安く買えたはずの商品を高く買わなければならなくなります。
「入札談合」とは、公共工事や物品の公共調達の入札の際、複数社が事前に相談して、その中から受注する会社や受注価格を決めることをいいます。入札談合が行われると、価格競争をしなくても望んだ価格での落札ができてしまうため、結果として高い価格で落札されることになります。本来、企業努力による価格競争があれば、より安く発注できた可能性があり、「入札談合」は、不当な取引制限のひとつとして禁止されています。
こんなことが起こると暮らしがあぶない!~企業の違反行為~ カルテル
こんなことが起こると暮らしがあぶない!~企業の違反行為~ 入札談合
公正な競争を阻害するおそれのある行為のうち、公正取引委員会が定めるものが独占禁止法19条で制限されています。
不公正な取引方法として、全ての業種に適用される「一般指定」と、特定の事業者・業界を対象とする「特殊指定」の2つがあります。一般指定で挙げられた不公正な取引方法には、取引拒絶、排他条件付取引、拘束条件付取引、再販売価格維持行為、ぎまん的顧客誘引、不当廉売などがあります。また、特殊指定は、現在、大規模小売業者が行う不公正な取引方法、特定荷主の行う不公正な取引方法及び新聞業の3つについて指定されています。
不公正な取引方法として、公正取引委員会から排除措置命令を受けた例としては、企業が商品を高く売るために、競争関係にある他のメーカーと共同して、安売りする販売店には商品を供給しないとした事案等があります。
不公正な取引方法 一般指定
物流特殊指定(特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法)について
これまでにどんな事件があったの?~私たちの身近に起こった事件ファイル~ タクシー事業者による共同の取引拒絶
株式保有や合併等の企業結合により、それまで独立して競争していた会社同士に結合関係が生じて、市場を支配したり、他の企業を排除したりするなど、市場の競争を実質的に制限する場合は、独占禁止法9条以下で規制されます。
企業結合が行われても、市場で企業間の競争が行われていれば、消費者は結合があった会社以外の会社の商品を選べるので、その企業結合は問題ありません。国内外を問わず、一定の企業結合を実施しようとする会社は、競争制限的か否かをあらかじめ審査するために公正取引員会への届出が義務付けられています。
企業結合について
こんなコトが起こると暮らしがあぶない~企業の違反行為~ 競争制限的な企業結合
企業は何をすればいいの?
企業の事業行為が独占禁止法に違反しないようにするには、独占禁止法コンプライアンス・プログラムの内容が全社的に共有され、その内容が統一的に運用されるために文書化されていることや、必要なときに容易に参照することができるようにしておくことが求められます。
さらに、公正取引委員会は、企業の経営トップが独占禁止法コンプライアンスに対するコミットメントを表明してイニシアティブを発揮すること、自社の実情に応じた独占禁止法上のリスクの特定をし、それに応じた対応策を用意すること、独占禁止法コンプライアンスを行う部門の設置等を、企業に求めています。具体的には、独占禁止法コンプライアンス・マニュアルを定めること、社内研修の実施、社員が独占禁止法違反行為に関与した場合の懲戒ルールを定めてそれを文書に明記すること等が挙げられます。
(PDFファイル)企業における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況について
(PDFファイル)事業者団体における独占禁止法コンプライアンスに関する取組状況について
我が国企業における外国競争法コンプライアンスに関する取組状況について~グローバル・ルールとしての取組を目指して~
(PDFファイル)独占禁止法遵守マニュアル作成の手引きの例
独禁法ーコンプライアンス・プログラム:御器谷法律事務所
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