生理休暇中に旅行、休暇の不正取得を繰り返した女性教諭が懲戒免職に
2025/01/09   労務法務, コンプライアンス, 労働法全般

はじめに


大阪府教育庁は2024年12月26日、生理休暇や介護休暇の不正取得などを常習的に繰り返していたとして、女性教諭を懲戒免職の処分にしました。

過去にも、長崎県の職員が「子どもが発熱した」とウソの申請で特別休暇を取得していた事例もあるなど、休暇の不正取得が問題となっています。

 

“旅行に行きたかった”理由に休暇を不正取得


今回、懲戒免職になったのは、支援学校に勤務する45歳の女性教諭です。
報道などによりますと、女性教諭はけがの療養で病気休暇中だった2018年9月から10月にかけて海外旅行へ行っていたということです。
その後も、2018年12月から2024年3月の期間で、生理休暇や介護休暇を名目に11回の虚偽申請を行い、休暇を取得したといいます。女性教諭は、休暇中にスペインやボリビアなど8か国への海外旅行や、沖縄や秋田など国内4ヶ所への旅行を行ったということです。また、在宅勤務日に実際には勤務を行わず、旅行していた回数も12回にのぼるとみられています。

女性教諭の休暇不正取得が発覚したきっかけは夫婦げんかでした。別の支援学校に勤務している女性教諭の夫が、夫婦げんか中に女性教諭の顔面を殴り全治1週間のケガをさせました。一方の女性教諭も夫に対して暴行を加えたほか、夫の眼鏡を折って壊すなどしたということです。

女性教諭にケガをさせた夫は2024年6月に傷害の容疑で逮捕されました。のちに不起訴となりましたが、大阪府の教育委員が調査を実施。その中で女性教諭の常習的な休暇の不正取得が発覚しました。

女性は不正取得が良くないと知りつつも、「旅行に行きたいという気持ちを抑えられなかった」と話しているといいます。

今回、女性教諭への管理監督責任があるとして、現在の校長や前校長ら3人も厳重注意を受けました。

 

長崎県職員の事例


これまでにも休暇の不正取得が発覚し、処分が行われた事例があります。

長崎県の県民生活環境部の男性職員(40代)は、子どもが発熱したとして「こども看護休暇」を申請。2022年4月から2023年4月にかけ、合わせて8日間の休暇を取得しましたが、全て虚偽だったといいます。

男性職員が2023年4月下旬に、今度は自身の発熱を理由に約1ヶ月間、有給休暇を取得したため、上司らがお見舞いの電話をしたところ、子どもの発熱が虚偽であったことが発覚したということです。

男性職員は病気で休みがちだったことから、「年末までの期間を考え、使用可能な年次有給休暇を確保しておきたかった」と、こども看護休暇を不正取得した理由を語っていたといいます。

一連の休暇の不正取得を受け、長崎県は男性職員を2ヶ月間・減給10分の1の懲戒処分としたほか、係長級から主任主事に降任する分限処分を行いました。

 

休暇について


休暇は大きく分けて2種類に分類されます。一つは、法令に基づく「法定休暇」で、年次有給休暇のほか、生理休暇、育児休業、介護休業などが含まれます。もう一つは「特別休暇(法定外休暇)」で、これは会社が福利厚生の一環として独自に設けた休暇です。

「特別休暇」については、取得条件などが社内規定で定められるのが一般的です。そのため、特別休暇の申請時に虚偽の理由を申告することは、就業規則違反となり、万が一、虚偽の申請が発覚した場合、処分の対象となる可能性があります。

一方で、休暇を与える企業側が注意したいのは「時季変更権」です。
世間的に、年次有給休暇を申請する際、会社側が従業員に休暇の理由を尋ねることがあります。しかし、原則として、従業員には理由を答える義務はありません。ただし、「時季変更権」が行使される場合には事情が異なります。

「時季変更権」とは、労働基準法第39条第5項但書に基づき、従業員が申請した時季に有給休暇を取得することが「事業の正常な運営を妨げる場合」、会社が他の時季への変更を求めることができる権利です。この権利を行使する際、会社は従業員に理由を確認する場合がありますが、その際も有給休暇の取得自体を拒否することはできません。

 

コメント


休暇中に不正に海外旅行などを繰り返していた今回の大阪府の事案。
一方、川崎市では、休暇を申請していた女性教員が、当日、業務上の必要があり数時間出勤したところ、休暇の不正取得(時間単位での休暇申請への切り替えを怠った、申請手続き上の事務的過失)があったとして、市教育委員会から給与など28万円強の返納を求められた事案もあります。

とかく、トラブルの原因となることも少なくない休暇制度。しかし、従業員の休暇管理は労務リスクを回避するための重要な課題です。
不正取得の予防や対応策を強化するため、就業規則の見直しや適切な教育・啓発を進め、透明性のある運用を心掛けましょう。

 

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