事業所内保育所の補助対象の拡大
2016/02/04 法務相談一般, 民法・商法, その他
1 事業所内保育所(※)の新たな補助制度
1月26日に開催された子ども・子育て会議において、政府は「1億総活躍社会」実現への主要政策として制度化を目指していた、事業所内保育所に対する新たな補助制度の概要を示した。
これまでは、市区町村の認可を受けた事業所内保育所を対象とした補助制度はあったが、今回の新たな補助制度では、市区町村の認可がなくても補助対象とするとのことだ。
事業所内保育所は全国で4000箇所以上あるが、認可を得るための要件が厳しく、認可を受けた事業所内保育所は200箇所に満たない状況にあった。そのため、政府としても認可外施設に対する補助を行い、子どもを預けやすくする環境を整えることを求められていた。
この新たな補助制度は4月に導入される予定だ。
(※) 企業等が従業員の子どもなどを対象として、事業所内又は隣接地に設置する保育施設のこと
2 新たな補助制度による変化
認可外の事業所内保育所は、認可を受けた施設と比べて保育料が高い傾向にあった。認可を受けた施設でなければ、国から運営費を補助されないからだ。
新たな補助制度により、認可外の事業所内保育所に対しても運営費の補助が行われるようになると、保育料が下がることが期待される。そのため、費用面をあまり気にすることなく子どもを預けることができるようになり、待機児童の解消にも繋がると考えられている。
3 事業所内保育所の現状
設置された事業所内保育所の6割は病院内のもので、一般企業にはあまり普及していない状況にある。事業所内保育所の運営に関し、場所の確保や費用の面で負担は大きく、保育の質を維持しながら安定した運営を行うことが、企業において大きな課題となっている。
もっとも、企業が従業員の仕事と育児の両立を支援することは、子どもを心配する従業員に対して安心感を与えることができ、女性従業員の退職を減少させることができると考えられる。また、福利厚生の充実という観点で、就職・転職活動を行っている者に対してアピールでき、入社希望者を増加させるなどの利点もあると考えられる。このような人材の確保・定着という効果が期待できるといえる。
4 注意点
保育料を下げ、事業所内保育所を利用しやすくしたとしても、利用者側は、次のような不安からその利用を敬遠することもあるので、注意しておきたい。
・ 事業所内保育所はビル内の環境が大半であるため、園庭などの設備が不十分であり、子どもが運動不足とならないか、という不安
・ 預かる子どもの人数が少人数であるため、子どもに集団行動を通じた体験・学習を行えないのでは、という不安
・ 出勤しなければ子どもを預けることができないのでは、という不安
・ 通勤ラッシュの中で子どもを連れて会社へ行くのは大変
5 おわりに
最近では、ローソンがコンビニ業界で初めてとなる事業所内保育所を「ハッピーローソン保育園」の名で本社に設置し、注目を集めている。
事業所内保育所は、女性の雇用を促進するという観点において重要な役割を果たすといえる。女性従業員を多く確保・定着させたい企業としては、新たな補助制度の導入に伴い、働きやすい職場環境づくりの一環として、事業所内保育所を設置することも視野に入れてみてはどうだろうか。
企業が設置する事業所内保育所では、子どもが怪我をしないように段差や出っ張りをなくすなど安全面に配慮したり、防犯カメラを設置するなどして防犯面を強化したり、食事の充実により子どもの健康管理に配慮するなど、様々な工夫を凝らしているところもあるそうだ。このような点において、認可施設と差別化が図られているので、参考にしたい。
法務担当者としては、事業所内保育所の設置方法や補助を受けるための要件に注目するだけでなく、子どもを預かることにより生ずる企業のリスクは何か(子どもが怪我をした場合など)、リスクを回避又は最小限にとどめるためにはどうすべきか、を考察し、事業所内保育所の設置に関する適切なアドバイスを提供できるようにしたい。
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