EUがアディダスの商標認めず、ロゴ商標の識別性について
2019/07/05 海外法務, 知財・ライセンス, 商標法
はじめに
欧州連合(EU)司法裁判所は先月19日、ドイツのスポーツ用品大手アディダスの3本線を商標と認めない判断を下していたことがわかりました。独自性が認められないとのことです。今回はロゴ(図形)商標における識別性要件について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、EUの知的財産庁は2016年にベルギーの企業によってアディダスの3本線商標の無効審判請求を受け無効としました。それに対しアディダスは審決取消訴訟を提起しましたがやはり無効との判決を下されたとのことです。2014年に登録されていたアディダスの商標は商品にどの向きに取り付けることも可能な、同じ太さで等間隔の3本の平行線というものです。シューズやスポーツウェア、その包装具などあらゆるアディダス製品に使用されております。このシンプルな3本線デザインについて商標としての識別性が主な争点となっておりました。
商標とその種類
商標とは業務で扱う商品や役務を他社のものと区別するための標識です。「iPhone」や「プリウス」「コカ・コーラ」といった商品名やメーカー名が商標として登録されます。商標権として商標法の保護を受けるためには特許庁に登録してもらう必要があります。登録されますと、登録の日から10年間商標権が発生します(商標法19条)。他人による侵害に対しては差し止めや賠償請求が可能となります(36条、37条、38条)。登録できる商標の種類は現在では音商標や動きの商標など多様化しておりますが、基本的には文字商標とロゴ(図形)商標となります。また文字とロゴを合わせたものも多く登録されております。
商標登録の要件
商標として登録されるための要件としてはまず自己の業務に係る商品または役務に使用するものでなくてはなりません(3条1項)。そして自己の商品または役務と他人のものとを識別できる必要があり、「塩」「砂糖」「アルミニウム」といった一般的名称や産地、品質といったもの、また氏名などに一般的に用いられるありふれたものは認められません(同項各号)。またロゴ(図形)の場合はたんなる仮名文字や数字、ローマ字、◯や△といったありふれた形なども識別性がないと言われております。
ロゴ商標における識別性
特許庁のガイドラインによりますと、ロゴ(図形)において識別性がないとされているのは、1本の直線、波線、輪郭として一般的に用いられる△や◯、ハート型などのマークです。また立体の場合は球や立方体、直方体、円柱、三角柱などが挙げられております。またこれらの簡単な輪郭内に単純に仮名文字やローマ字を配したものも同様にありふれた標章として識別性がないとしています。ローマ時などの場合でも&で連結したり、複数の文字を重ねてモノグラムにするといった工夫をほどこせば、ありふれた標章には該当しないとされております。
コメント
本件でアディダスが登録していた商標は同じ太さで等間隔な3本線というものでした。これには特に向きや角度の指定はなく、あらゆる商品に3本線が施されております。EU司法裁判所はこれを普通の図形であり識別性を証明できていないとして無効と判断しました。アディダスは現在日本でも多数の商標登録を行っておりますが、この3本線のロゴに関しては登録されておりません。日本の特許庁でもこのシンプルな3本線は識別性がないと判断される可能性はあると言えます。以上のように現在日本では文字だけでなく図形や文字と図形を複合させたものを商標として登録することができます。しかし登録されるためにはかなり複雑で微妙な要件があり、それなりの独自性と工夫が必要となってきます。商標登録を検討している場合はやはり弁理士などの専門家の意見を交えてデザインを考えていくことが重要と言えるでしょう。
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