「コロナに効果」で逮捕、薬機法の規制について
2020/06/19 薬事法務, 薬機法, その他
はじめに
医薬品ではないのに「新型コロナウイルスに有効」などと宣伝したとして大阪府警は17日、タンポポ茶製造輸入会社と販売会社の社長らを逮捕していたことがわかりました。ホームページやチラシで広告していたとのことです。今回は薬機法の規制について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、兵庫県西宮市などで健康食品の輸入販売会社を経営していた中国籍の夫婦が同社ホームページで、タンポポの葉から抽出した成分にウイルス感染を防ぐ効果があるなどと記載していたとされます。大阪府警はコロナに効くとうたってタンポポ茶を販売していた大阪府内の薬局への販売元を捜査していたとのことです。同社は以前から中国から輸入した健康食品等を全国の薬局に販売しておりましたが、新型コロナの感染拡大以降このような宣伝をするようになったとされております。
薬機法による規制
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)68条によりますと、14条の規定により承認をうけるべき医薬品で、未承認のものについては、名称、製造方法、効能、効果または性能に関する広告をしてはならないとされております。そして14条1項では厚労大臣指定のものを除いて、医薬品、医薬部外品、一定の成分を含有する化粧品については厚労大臣の承認が必要とされております。違反した場合には中止命令や措置命令の対象となり(72条の5)、また罰則として2年以下の懲役、200万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されております(85条5号)。
誇大広告等の規制
薬機法66条では誇大広告等も規制されております。医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品について、名称、製造方法、効能、効果、性能に関して、明示的・暗示的問わず、「虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」としています。違反した場合には上記未承認薬の広告同様に措置命令の対象となり、2年以下の懲役、200万円以下の罰金またはこれらの併科となっております(72条の5、85条4号)。またさらに誇大広告の場合は景表法の不当表示行為と同様に課徴金納付命令の対象となっております(75条の5の2)。
その他の規制
上記の他にも薬機法では、癌その他特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品、再生医療等製品については厚生労働省令によって広告が制限されている場合があります(67条)。これは医師または歯科医師等の専門家の指導の下で使用しなければ重大な危害が生じるおそれが強いことから特に厳格な規制が置かれているということです。こちらにもやはり上記の未承認薬、誇大広告と同様の罰則が設けられております(85条15号)。
コメント
薬機法2条1項によりますと、医薬品とは「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的」とされている物とされております。本件で問題となったタンポポ茶は「新型コロナウイルスにも有効性が期待できる」などと広告しており疾病の治療や予防に使用されることを目的としていると言えることから「医薬品」に該当し薬機法が適用されることとなります。このように特定の疾病への効能をうたった場合は健康食品などであっても医薬品とみなされることとなります。また実際の効果よりも誇張して広告を行った場合は薬機法だけでなく景表法にも抵触する可能性があります。広告を作成する際には誇大なものとなっていないか、また特定の疾病への効用をうたっていないかを十分に注意することが重要と言えるでしょう。
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