産経新聞、景表法違反の措置命令を受け、処分を発表
2021/08/18 広告法務, 消費者取引関連法務, 景品表示法, その他
はじめに
新聞購読の契約に際し提供される景品に関して、産経新聞社大阪販売局が景品表示法(措置命令)に違反しており、役員と当時の幹部社員計8人への処分と再発防止策を13日に発表しました。
事案の概要
大阪府は平成31年3月に電動アシスト自転車などの法定の制限額を超える高額景品の提供があったとして、大阪販売局に対し措置命令を発出していました。
今年3月に至り大阪販売局での違反行為が是正されていないとの情報があり本社は調査委員会を設置しました。同委員会は措置命令に違反する行為を大阪販売局がしていることを、今年7月に本社に報告していました。これを受け、本社は本件処分に踏み切りました。
景品表示法とは
商品・サービスの質や価格面での競争は、事業者、消費者の双方にとって有益なものです。しかし、事業者が過大景品を提供することにより消費者が過大景品に惑わされて質の良くないものや割高なものを買わされてしまうことは、消費者にとって不利益になるものです。
また、過大景品による競争がエスカレートすると、事業者は商品・サービスそのものでの競争に力を入れなくなり、これがまた消費者の不利益につながっていくという悪循環を生むおそれがあります。
このため、景品表示法では、景品類の最高額、総額等を規制することにより、一般消費者の利益を保護するとともに、過大景品による不健全な競争を防止しています。
景品類の制限
景品表示法では、過大な景品類の提供を禁止しています。景品類とは、顧客を誘因する手段として、取引に付随して提供する、物品や金銭などの経済上の利益指します。
本件でいうところの新聞購読の代わりに電動自転車を交付するという行為は、電動自転車の交付が顧客の有因に繋がり、新聞購読という取引に付随した物品の提供であり、電動自転車の提供は経済上の利益といえることから、大阪販売局の提供していた景品は、景品表示法でいうところの景品類に該当することとなります。
そして、景品類の提供の類型を(1)一般懸賞に関するもの、(2)共同懸賞に関するもの、(3)総付景品に関するものに分け、それぞれ、提供できる景品類の限度額等が定められています。
(1)について、商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供することを「懸賞」といい、共同懸賞以外のものは、「一般懸賞」と呼ばれています。
(2)について、中元・歳末セール等、商店街(これに準ずるショッピングビル等を含む。)が実施する等、複数の事業者が参加して行う懸賞は、「共同懸賞」といいます。
(3)について、一般消費者に対し、「懸賞」によらずに提供される景品類は、一般に「総付景品」、「ベタ付け景品」等と呼ばれており、具体的には、商品・サービスの利用者や来店者に対してもれなく提供する金品等がこれに当たります。商品・サービスの購入の申し込み順又は来店の先着順により提供される金品等も総付景品に該当します。
本件でいうところの新聞購読の契約に際し提供される電動自動車は、総付景品に該当すると解されます。そして、総付景品の限度額は、取引価額が1000円以上であれば取引価額の10分の2ですが、新聞購読の契約額に比して電動自転車の価額がその10分の2以上であるとして措置命令を受けたものと推測されます。
コメント
ビジネスに付きまとう法律は多岐にわたり、法律を破る意図はなくとも実は法律違反をしていたというケースをよく目にします。
企業法務従事者としては、景表法に関し正確な知識を身に付け、現在の景品の価額が景表法に違反しないか及び今後の取引において景品を付与する時に価額規制に違反していないかの判断を慎重にした方がよいでしょう。
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