三菱電機が特別高圧以上の変圧器における不適切行為に関して報告
2022/05/12 コンプライアンス, メーカー
はじめに
三菱電機株式会社は2022年4月21日、「当社の特別高圧以上の一部の変圧器における不適切行為に関する件」とする文書を発表し、試験成績書へ不適切な記載などについて報告を行いました。さらに、同年5月6日には、同社の系統変電システム製作所におけるISO9001認証およびIRIS認証が一時停止されたことも発表しました。本記事では、これまでの経緯についてまとめます。
三菱電機が行った調査の概要
三菱電機株式会社は今回の調査で、同社の系統変電システム製作所赤穂工場(兵庫県赤穂市)が製造する特別高圧以上の一部の変圧器で、顧客から要求を受けていた規格に準拠した受入試験の一部を規格と異なる要領で実施し、試験成績書へ不適切な記載を行っていたこと、一部の製品で社内基準等と異なる設計を行っていたことを発見し、文書で謝罪しました。顧客から要求を受けていた規格とはJEC規格、IEC規格、IEEE規格のことで、それぞれ社団法人や国際機関が定める規格です。また、「規格に準拠した受入試験」とは、ある製品が規格の基準を満たすことを検証する形式試験の合格品と同等の性能を有することを確認する出荷前試験と定義されます。今回の調査では、これらの受入試験の基準と異なる要領で試験を実施していたことなどが発覚したのです。
不適切行為の具体的な内容
対象商品は特別高圧以上の変圧器で、対象台数は1982年~2022年3月出荷分計8,363台となります。三菱電機によると、発覚した具体的な不適切行為は①耐電圧試験に関する不適切な記載②温度上昇試験における不適切な記載③変圧器の損失測定における不適切な記載④絶縁設計における不適切設計、の4つです。①耐電圧試験における記載については、EC規格、IEC規格もしくはIEEE規格などで規定された電圧値よりも低い電圧を印加していたにもかかわらず試験成績書に規格で規定された電圧値を記載していました。また、②と③は試験成績書に正確な内容を記載していませんでした。最後に、④絶縁設計における不適切設計は、絶縁設計でJEC規格、IEC規格またはIEEE規格で規定された試験電圧値に基づく社内設計基準を下回る電圧で設計を行っていました。
調査委員会による報告
三菱電機は2022年4月21日、「調査委員会による調査完了時期等に関するお知らせ」という文書を公表し、調査内容の進捗や今後の動向について説明しています。文書によると、当初は2022年4月を目途に調査完了を目指す旨を公表していたものの、調査委員会から調査完了までさらに時間を要する旨の連絡があったことから、調査期間を延長するとのことです。現在のところ、調査は5月下旬までに全22製作所等のうち8 割以上の調査作業が完了する見込みであり、近々新たな発表ができる予定です。また、ガバナンスレビュー委員会による内部統制システム・ガバナンス体制全般の検証結果、報告、改善策の提言については、同委員会から調査結果を踏まえて提言・報告が行われる予定であり、その旨は別途文書で公開される予定です。
不適切行為の余波
赤穂工場や尼崎市・神戸市兵庫区に拠点がある系統変電システム製作所の品質管理に関する国際規格の認証(「ISO9001」と「IRIS」)が、2022年5月6日日付で一時停止されたと発表されています。この一時停止の解除には、2ヶ月以内に問題を解決の上、英国の認証機関に報告する必要があり、逆に、問題解決が認められない場合には認証取り消しの可能性もあるとのことです。その場合、認証取得が条件として指定される入札に今後参加できなくなるおそれがあります。
コメント
今回の不適切行為は主に各種試験に関する不適切な記載や絶縁設計の不適切な設計によるものであり、調査委員会の調査によって判明したものです。この結果を受けて三菱電機は「引き続き、同委員会の調査に全面的に協力し、品質にかかわる不適切行為の全容解明に向けて総力を挙げて取り組む」としており、不適切行為の速やかな解明と改善が待たれます。企業の信用を失墜させないためにも、特に出荷前試験等の決められた基準は守り、報告や記載等に誤りが起きない体制づくりが望まれています。
法務の立場からは、自社製品の信頼を揺るがす不正が発覚した場合に、レピュテーションリスクのみならず、認証取り消しによる入札チャンスの喪失・製品交換のための莫大な費用の発生などのリスクが起こり得ることを念頭に、コンプライアンス体制の構築に注力する必要がありそうです。
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