株主総会の手続き まとめ
2024/04/18 商事法務, 総会対応, 会社法
はじめに
どの企業でも毎年、事業年度終了後の一定期間内に定時株主総会を招集することが求められます。また、それ以外でも定款変更や株式併合、剰余金配当などを行う際には随時、臨時株主総会の招集が必要です。
株主総会は、会社の実質的な所有者である株主が議決権行使を通して自己の意思を会社運営に反映させる重要な場です。そのため、株主総会の招集や議事運営・議決権の行使などといった手続き等に不備があった場合、後日、株主等から訴訟を提起されるリスクがあります。
今回は、会社法で定められた「株主総会の手続きの流れ」を詳しく見ていきます。
株主総会の招集権者
株主総会の招集は、原則として代表取締役が取締役会決議に基づいて行うとされています。取締役会非設置会社の場合は、取締役の過半数により決定し、代表取締役が招集することとなります(会社法第348条2項)。
会社法第296条3項では「株主総会は、次条第4項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する」と規定しており、条文上は取締役なら誰でも招集できるように見えます。しかし判例では上記のように取締役会決議に基づいて代表取締役が招集しなければならないと判示されています(最判昭和45年8月20日)。
取締役会設置会社では招集権限を取締役会が代表取締役に委任することはできず、定款で代表取締役に招集権を付与することもできないとされています。同様に、指名委員会等設置会社の執行役に委任することもできません(第416条4項4号)。
例外的に株主が招集できる場合があります。議決権の3%以上(公開会社では6ヶ月前から)を保有する株主は株主総会の目的と理由を示して取締役に招集請求することが可能です(第297条1項)。請求後遅滞なく招集手続きが行われない場合や請求の日から8週間以内の日を株主総会開催日とする招集通知が発せられない場合は、裁判所の許可を得て株主自ら招集することができます(同4項)。
招集時期と場所
株主総会は毎年必ず招集される定時株主総会と、それ以外の臨時株主総会に分けられます。定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集する必要があります(第296条1項)。
基準日を設けている場合はその3ヶ月以内に開催することとなります。例えば、事業年度を4月1日から3月31日までとしている会社では、3月31日を基準日とし、6月中に定時株主総会を開催するのが一般的と言えます。
一方で、臨時株主総会は随時開催されることになります。
株主総会の開催地については会社法上特に規定はありません。旧商法では本店所在地またはその隣接地を原則とし、定款で定めることも可能とされておりましたが、現行法ではそのような規定はありません。
ただし、株主の出席が困難な場所等で開催した場合、“手続きが著しく不公正”であるとして株主総会決議取消訴訟の対象となることもあります(第831条1項1号)。
なお、現在では産業競争力強化法の改正によりオンラインによる株主総会の開催も可能となっております。これには一定の要件があり、(1)上場会社であること、(2)経済産業大臣と法務大臣の確認を受けたこと、(3)定款による定め、(4)招集決定時に要件を満たしていることなどが挙げられます。
また、リアルとオンラインのハイブリッドによる開催も可能です。
招集決定
上述のように、株主総会の招集決定は、取締役会設置会社なら取締役会で、非設置会社の場合は取締役の過半数で決定します。ここで決議すべき事項は以下の通りです(第298条1項)。
①株主総会の日時と場所
②株主総会の議題
③書面また電子投票ができる場合はその旨
④その他法務省令で定める事項
ちなみに、「④その他法務省令で定める事項」とは、株主総会参考書類記載事項や書面投票・電子投票の議決権行使期間、代理人による議決権行使、議案の概要などとされます。
なお、株主の数が1000人以上である会社は書面投票ができる旨を定める必要があります(同2項)。
招集通知の発送
1.招集通知の発送時期と通知方法
(1)公開会社の場合
公開会社は招集通知を開催日の2週間前までに発しなければならないとされております(第299条1項)。これは株主に出席と準備の機会を与えるためと言われています。この2週間という期間は発進日と開催日を参入せずに14日以上を確保しなければなりません。
通知の方法としては、取締役会設置会社、または書面・電子投票ができる旨を定めた場合には書面による通知が必要とされます(同2項)。ただし、株主の承諾を得て電磁的方法(電子メール)によることも可能です(同3項)。
また、定款に定めを置くことによって株主総会参考書類、事業報告書、計算書類等をWEBで公開することにより、書面による提供を省略することもできます(会社法施行規則94条1項、133条3項等)。
(2)非公開会社の場合
非公開会社の場合は招集通知を原則として開催日の1週間前までに発する必要があります。ただし、非公開会社でも書面・電子投票を採用している場合は2週間前までに発する必要があります(第299条1項)。
通知方法については、取締役会設置会社の場合は上記の公開会社と同様ですが、取締役会非設置会社である場合は特に制限はなく、電話やメール、SNSなどどのような方法でもかまいません。
2.招集通知の記載事項と添付書類
招集通知には、上でも触れた「招集決定の際の決定事項」を記載することとなります(第299条4項)。そして、書面・電子投票を採用した場合にはこれとともに議決権行使書面と株主総会参考書類を添付します(第301条1項、第302条2項)。
この株主総会参考書類とは、議題や議案の提案理由など議決権行使に際して参考とすべき事項が記載された書面です。また取締役会設置会社が定時株主総会を招集する際には計算書類や事業報告も添付することとなります(第437条)。
3.電子提供制度
2022年施行の改正会社法ではさらに電子提供制度が導入されています。これは、上記の電磁的方法による通知と異なり、株主の個別の承諾を不要とし、またWEB開示制度とも異なり全ての資料をWEBで提供できる点に大きな特徴があります。
電子提供制度を採用するためにはやはり定款による定めが必要です(第325条の2)。そして、株主総会の3週間前または招集通知を発した日のいずれか早い日から総会後3ヶ月を経過するまでWEBで電子提供措置を取る必要があります(第325条の3)。
この電子提供制度を採用する場合は公開・非公開会社問わず、2週間前までに招集通知を発する必要がありますが、その通知には電子提供措置を採用している旨や閲覧すべきWEBサイトのURLの記載で足りるとされます(第325条の4)。
なお、やはり書面による資料の交付を希望する場合は、株主はその旨会社に請求することができるとされます(第325条の5)。
招集手続きの省略
ここまで紹介してきた株主総会の招集手続きは、株主全員の同意がある場合には省略することが可能です(第300条)。しかし、書面・電子投票を採用する場合はやはり省略はできません(同ただし書き)。
また、株主総会の招集手続きに不備があった場合でも、株主全員が株主総会開催に同意して出席していた場合は株主総会は適法に開催され、決議も成立したものとされます(最判昭和46年6月24日)。
まとめ
以上のように、会社法では株主総会の招集決定、決議事項、招集通知、資料の提供などについて詳細な規定を置いています。特に近年では新型コロナウイルス感染拡大もあり、オンラインによる開催も可能となるなど様々な法改正がなされています。
株主総会の招集手続きは、そこに不備があった場合には株主総会決議取消の訴えの対象となるなど、後日紛争の原因となることがあります。上でも触れたWEB提供や電子提供措置は定款記載が必要で、それを欠く場合も同様に訴えの対象とされています。
公開・非公開、また取締役会設置・非設置会社でそれぞれ手続きも異なります。自社に合わせて必要な手続きを再確認し、不備の無い総会運営を心がけることが重要と言えるでしょう。
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