市職員の約4割が市長ら特別職からパワハラ-愛知・津島市
2023/10/30
はじめに
市議会で、前副市長の市職員に対するパワハラ疑惑が問題視されていた愛知県津島市。同市は10月25日、職員の約4割が過去10年間で”パワハラ”を経験していたとするアンケート結果を公表しました。アンケートでは、津島市におけるハラスメント常態化の実態が明るみに出ると共に、相談窓口の機能不全も垣間見える結果となっています。
特別職からのパワハラ105件
愛知県津島市は、今年8月、市職員499人を対象にアンケートを実施。回答者数は301人、回答数は377件(複数回答可だっため)だったといいます。
その中で、「過去 10 年間にハラスメント等を受けたか」という質問に対し、「パワーハラスメントを見聞等した」とする回答が143件、「自分自身がパワーハラスメントを受けたと感じたことがある」とする回答に至っては163 件と、回答者数の半数以上にのぼりました。
また、パワーハラスメントの行為者についての質問では、市長・副市長・教育長といった特別職から受けたとする回答が105件、管理職の上司とする回答が93件。
パワーハラスメントの内容としては、「脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(罵声)」が175件、「業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)」が102件という結果となってます。
今回のアンケートに先立ち、市の職員組合が5月に組合員向けにアンケートを実施していました。その結果、「市の幹部からパワハラを受けた」「パワハラの現場を見た」とする回答が89件にのぼり、中には「副市長が差別発言をした」という回答も含まれていたといいます。
このアンケートの後、当時の副市長に対し問責決議案が提出。賛否同数で議長裁決までもつれた結果、否決となったものの、その後も副市長の辞職を求める声が相次ぎ、副市長は8月に辞職を申し出ていました。
一連の流れを受け、「津島市職場環境改善に関する第三者委員会」が8月にアンケートを実施。10月25日に中間報告を公表していました。最終報告は12月に公表予定とされています。
津島市は「調査を見守り、必要な対策を検討する」としており、第三者委員会からの最終報告書の提出を待ち、職場環境改善についての対策を進めていくとしています。
相談窓口、機能不全の疑いも
長年、パワーハラスメントへの対応が放置されたり、組織がハラスメントを認識できない期間が続くことで、有望な人材の流出はもとより、最悪のケースでは、自殺者の発生などの大きなリスクを抱えることになります。パワーハラスメント対策としては、
(1)相談窓口で報告を受領
(2)報告に対する事実確認
※証拠の有無を含め、ヒアリングを実施
(3)対応方針の決定
という流れをとるのが一般的です。したがって、組織としてパワーハラスメントに適切に対応するためには、第一に、相談窓口を効果的に機能させる必要があります。
一方、今回のアンケートでは、津島市の相談・苦情対応窓口がうまく機能していなかった可能性が示唆されています。パワーハラスメントを受けた際の対応を聞く質問に対し、「同僚に相談した」とする回答が86件となっている一方で、市が設置している相談窓口(人事秘書課)に相談したとする回答は、わずか9件にとどまりました。
相談窓口を効果的に機能させるためには、以下を考慮しながら運営をすることが重要といわれています。
・相談方法は口頭・電話・メール・Webなど、複数用意すること
・相談窓口の担当者を複数名配置し、性別や年齢にも配慮すること
・窓口担当者にもハラスメント講習を受けさせること
また、報告へのハードルを下げるべく、匿名性を担保するなどの環境づくりが求められます。人事担当者などと連携し、改善を検討する必要があります。
コメント
表に出てくることが少ない地方自治体内のハラスメント情報。一般的に公務員から民間企業への転職は難易度が高いと言われており、それゆえか、現職に不満がある場合でも、「転職」を選ばずにひたすら耐え忍ぶ選択をとる職員が少なくないとされています。そんな中、今回、明らかになった津島市の実態。パワーハラスメントを受けても、声もろくにあげられず、現職にとどまり耐えている職員が多数いることがわかりました。
閉鎖的で関係性が固定化されやすい組織では、ハラスメントが横行しやすいとされていますが、その意味では、津島市に限らず、多くの地方自治体が同様の状況となっているおそれがあります。各地方自治体で同様のアンケートを行い、実態把握を行う必要があるのではないでしょうか。
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