中国産ウズラの卵を国産に偽装?食品会社社長が食品表示法違反で書類送検
2024/02/26 コンプライアンス, 広告法務, 食料品メーカー, 小売
はじめに
神奈川県警は2月13日、中国産のウズラの卵を使ったピクルスを国産と偽り販売した容疑で、食品会社「山や」と、同社の男性社長を食品表示法違反(原産地虚偽表示)で書類送検しました。
中国産を“国産”と表示
報道などによりますと、山やは昨年、うずらの卵が実際には中国産であるにも関わらず日本産と偽り、ピクルスに加工し瓶詰めした商品を百貨店に販売した疑いが持たれています。商品ラベルには「国産」と表記されていましたが、会社社長は「中国産と分かっていたが瓶に国産と貼っていたことに気づかなかった」などと話し、容疑を否認しているということです。
虚偽表示は、2022年6月中旬から2023年2月上旬ごろまで行われ、百貨店に4本販売したほか(2073円分)、特産物品販売所やスーパー銭湯など約50本(合わせて約3万円分)を販売していたとみられています。
警察は、昨年2月ごろから捜査を開始しており、その翌月に専門機関で卵を鑑定したところ、中国産であると判明したということです。さらに、中国産だけでなく、ほかにも外国産のものが一部含まれていたといいます。
食品表示法における原産地虚偽表示規制
食品表示法第5条では、食品の製造・加工(調整及び選別含む)・輸入を業とする者、食品の販売を業とする者、いわゆる食品関連事業者等に対し、「食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売」を禁止しています。
その一環として、食品関連事業者等には、食品表示基準に基づいて、生鮮食品の原産地や加工食品の原料原産地の表示を行うことが義務付けられています。今回のケースでは、対象となった食品が一般消費者向けの「ウズラの卵を使ったピクルス」ということで、一般用加工食品の原料原産地の表示方法(食品表示基準第3条2項)に違反したとみられます。
行政処分・刑事罰について
もし、食品表示法に違反して、原料・原産地の表示などの遵守事項を守られていないと認められた場合、
・表示事項を表示すべき旨の指示
・遵守事項を遵守すべき旨の指示
のいずれかが行政側より行われます(食品表示法第6条1項)。
さらに、これらの指示を受けたにも関わらず、正当な理由なく措置を講じなかった場合には、内閣総理大臣の権限にて、事業者に対し、措置をとるよう「命令」することができます(食品表示法第6条5項、6項)。ちなみに、行政側は、これらの指示・命令を行った際に、その旨を公表する義務を負います(食品表示法第7条)。
もし、この命令にも従わなかった場合、違反者には、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(第20条)が科せられます。さらに、法人に対しては1億円以下の罰金刑(第22条2号)が科されるおそれがあります。
また、原材料の原産地を含む“原産地”について虚偽の表示がされた食品の販売を行った者には、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金(第19条)。法人罰として1億円以下の罰金(第22条2号)が科せられる可能性があります。
コメント
食品の原産地表示をめぐり、過去には、生鮮農産物カットごぼうおよびカットにんじんの原産地を、中国産であるにも関わらず国産だと表示し販売していた企業に対して、表示の是正、原因の究明・分析の徹底、再発防止対策の実施などの指示が行われています。
警察庁が昨年10月に発表した資料によると、2022年中における食品の産地等偽装表示事犯の検挙事件数は4事件。その他の年でも、年間10件前後とそれほど数は多くはありませんが、行政より“命令”を受けた際には、立入検査を受け、従業員や関係者へ聞き取りが行わる他、報告徴求命令が出されるなど、会社にとって大きな打撃となります。自社で食品販売等を行う際には、産地偽装を行うリスクを社内でしっかりと共有していくことが求められます。
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