熱中症は気温の高い日、長時間のみの問題か
2011/08/08 法務相談一般, 民法・商法, その他
パチンコ店での悲劇
先月26日、石川県パチンコ店の駐車場に幼児を放置し死なせたものとして両親が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。この事件、パチンコ店駐車場で幼児を車内に4時間あまり放置したことにより熱中症にかかり死亡したものと見られている。
では夏の暑い時期の長時間の放置でなければ大丈夫なのか、この点について気になる研究データが報告されている。
気になるデータ
自動車内など太陽光が差す気温45度の環境に3歳児を放置した場合、わずか13分で熱中症(脱水症状)になる可能性があることが、名古屋工業大の平田晃正准教授、金沢医科大の佐々木洋主任教授らのグループのシミュレーション実験で分かり、近く米科学誌「電磁科学アカデミー」に発表される模様だ。実験は、コンピューター内に再現した人体モデルに、発汗量や体温上昇などの情報を入力するもので、3歳児は太陽光による体温上昇は大人より少なかったものの、外気温の影響を受けやすく、40度の際には17分で熱中症の状態になった。
そしてJAFが2007年4月末に行った調査では、早朝からの車内の温度変化を調べたところ最高気温は23℃であったが、昼前には運転席の温度は40度に達し、午後2時過ぎには48・7度になったことが報告されている。つまり気温がさほど高くない場合であっても気象状況によっては車内温度が40度を超えることもあることが示されている。
さらに乳児の場合は、一見スヤスヤと気持ちよく寝ているように見えても、実は体内では大人が小走りをしている時と同じくらいの代謝をしている。そして、体温調節機能が未熟であるために脱水症状を起こしやすく、急激な温度変化に身体が対応しきれないため短時間でも症状が重篤化するおそれがある。すると、それほど暑くない季節であっても、車内でスヤスヤと寝ている幼児が10分程度の短時間のうちに重症疾患になることや、死に至る可能性もありうる。
規制のその前に
今回の事件を受け、警察庁・生活安全局は、2011年7月27日付けで同局の保安課長からパチンコ業界5団体の会長や理事、理事長に向けて、乳幼児連れで来店する客に対しては「駐車場への入場そのものを断る」ように要請を行った。しかし、現状ではあくまでも要請に留まるもので、法的な拘束力は持たない。
事件の重大性を考えると、法的な規制も考慮にいれることは大事である。しかし、今回の調査からすると、短時間の用事であっても、そして乳幼児が外見上さほど汗をかいていなくとも脱水症状が進み熱中症となる場合もあることを示している。暦の上では秋になるが、パチンコなどしないから大丈夫などと楽観するのではなく、乳幼児はまだなお短時間の用事を行う場合でも熱中症になる危険性があることに十分注意して頂きたい。
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