「カレログ」サービス会社、指摘を受け改善実施へ
2011/09/02 法務相談一般, 民法・商法, IT
1. どんなサービス?
「カレログ」は、Android OSを搭載したスマートフォンのGPS機能を利用してスマートフォン利用者の位置情報を通知するサービスである。
マニュスクリプト(カレログ事務局)が開発したこのアプリは、公開当時から非常に話題になっていた。
機能は、通常会員で、GPSでの位置情報確認と端末のバッテリー残量確認(電源をわざと切ったのか、自然に切れたのか分かるようにするため)ができる。
プラチナ会員では、それらの機能に加え、通話記録確認と、端末に新しいサプリが追加されるとその内容を確認できる機能が使用できる。
相手にとっては行動や通信のほぼ全てを自動的に把握されることになるため、率直に言って、プライバシーはないに等しい。
一方、利用の手続きは非常に簡単で、位置を知りたい人の携帯電話がGPS機能を搭載しているAndroid端末(OS2.2以降)であることと、位置を把握したい人がインターネットに接続できてカレログサイトにアクセスできることの2点のみ。
マニュスクリプト社は、利用にあたって、通報される人の同意を得るよう利用者に要請していた。しかし、同意を得るかは基本的に利用者に委ねられている上、アプリの説明は利用者に任されているため、サービスの内容が正しく理解された上での同意でない可能性もある。
今回、マニュスクリプト社は「お詫び」として、「端末所持者本人との同意の上で利用できるサービスである旨を再三にわたって確認するような登録システムの採用、並びに規約を違反した不正使用があった場合の強制退会措置などプライバシーの保護におきましては、配慮をしてきたところではありますが、『本人との合意を得たという担保が不十分である』という多くのご意見を賜りました」と発表した。
また、「カレログ」という名前について、「男性差別を助長する」「男には何をしても良いのか」という苦情があったことについては、そのような意図はないと否定している。
2. 恋人のプライバシー、家族のプライバシー
「カレログ」は、その名前から、恋人の行動が気になる女性がターゲットという印象があり、今回の注目度につながったと考えられる。
マニュスクリプト社は、改善の実施を約束したものの、サービス自体は続けるようだ。
需要があることの現れだろう。
位置情報確認サービスは、災害や事故など緊急時の安否確認に利用するのは、一般的に受け入れられるだろう。しかし、平常時に24時間監視可能にするのは、いくら親しい間柄でも受け入れがたいのではないだろうか。
恋人よりも距離が近い夫婦や親子間でも、精神的な束縛が重荷になると考えられる。
利用するかどうかは個人の判断次第だが、同意を得られるケースは非常に稀なのではないだろうか。
3. 「改善策」は改善になるのか?
マニュスクリプト社は、1.アイコン画像、並びにアプリ名を本サービスが使われているものと、さらにわかりやすいものに変更する。2.GPS機能が使われていることの視覚的なアナウンスを行う。3.端末利用者のメールアドレスも登録時に必要とするなどし、同意の確認を連絡する。その他、端末所持者本人との利用同意が得られていることへの確認がとれる機能等を順次追加する予定と発表した。
これらの改善策により、アプリを利用していることが分かりやすくなり、通報されている人が了承した上での利用であることを担保できるようになるという考えのようだ。
しかし、事情はそれぞれあるにしろ、恋人関係の2人が信頼を深めていくのに、このアプリは邪魔にしかならないのではないだろうか。
アメリカの刑務所でも、監視が厳しい場所ほど脱獄囚が多いという。
開発会社は、真の信頼関係を築くのに役立つアプリを作る努力をしてほしい。それこそが本当の改善策だろう。
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