下請けイジメはいつまで続くのか?震災後の下請け業者の不安・・・
2011/10/03 コンプライアンス, 下請法, その他
概要
平成23年9月30日、公正取引委員会は,王子運送株式会社(以下「王子運送」)に対し、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)第4条第1項第3号(下請代金の減額の禁止)の規定に違反する事実が認められたとして,下請法第7条第2項の規定に基づき,同社に対して勧告を行った。
王子運送は,自社のコストを削減するため,貨物の運送を委託した下請事業者に対し、「割戻金」 「事務手数料」 「金利手数料」等の名目で、負担を要請した。これらの要請により、下請事業者には責任がないのに,当該下請事業者に支払うべき下請代金の額を減じた(減額した金額は,下請事業者193名に対し,総額5526万4594円である。なお,王子運送は,平成23年9月16日,当該下請事業者に対し,減額した金額を返還した。)
王子運送に対する勧告の内容は、以下の通りである。①王子運送が違法行為をした事実を認め、今後、下請事業者に責任がないのに,下請代金の額を減じない旨を取締役会の決議により確認すること、②王子運送は,違法行為をした事実を自社の役員及び従業員に周知徹底すること、③ 王子運送は,再発防止のための社員教育を徹底すること、④王子運送が①②③の措置を取った旨及び、同社が違法行為を行った事実を取引先下請事業者に周知すること。
東日本大震災後における下請け業者の心配
公正取引委員会に寄せられた心配事として、以下の5つが挙げられている。
① 制作会社としては、震災時の緊急対応である低い価格で,今後も制作してほしいと言われることが心配だ。
② 卸売業者としては,小売業者が震災による消費の冷え込みを見越して安く販売したにもかかわらず売れ残った場合に,小売業者から売れ残った在庫を返品されたり,協賛金を要請されることが心配だ。
③ 食料品メーカーや卸売業者としては,放射能の問題を受けて,今後,消費者の安全・安心を名目として,小売業者からいろいろな要請を受けることが心配だ。
④ 震災の影響により,経済活動の基盤が西日本にシフトし,親事業者の発注先も西日本,更には海外にシフトしていくのではないかが心配だ。
⑤ 夏期節電対策として親事業者が業務内容を見直すことに伴い,下請取引等へ影響が出るのが心配だ。震災に関連する下請取引等の監視については今後も維持した方がよい。
雑感
下請法の目的は、下請取引の公正化・下請事業者の利益保護である。下請け業者の弱い立場につけこんで、不公正な取引をなすことを防止している。不況下で経営が厳しいのは親事業者も下請け事業者も同一であり、言い訳にはならない。情報格差と交渉力の格差が不公正な取引となって現れると、経済が停滞する。今後、勧告措置が実効性を伴って履行されることを切に望む。
【関連リンク】
- 下請取引改善協力委員会議で出された主な意見について(PDFファイル) - 公正取引委員会(リンク切れ)→アーカイブ(PDFファイル)
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