IT事業と法務(主に知財)についてのまとめ
2017/03/08 IT法務, 知財・ライセンス, 著作権法, IT
1、はじめに
現状では、IT法務に通じた企業担当者を抱える企業が少ないために、システム開発にまつわる各種トラブルが増えているようです。また、システム部門からは、法務部門に対して、「(製造や流通など)本業にかかわる法律には詳しいが,システム開発・運用の実態をよく理解していない」、「法律の解説はするものの,システム部門が抱えている問題の解決策を示せない」、「経営におけるITの重要度は増しているにもかかわらず,法務担当者はITのことを勉強しない」といった厳しい意見も出ているようです。その上、外部に頼ろうとしても、ITと法務の双方に通じた弁護士もいまだに多いとはいえない状況といえます。
そうであれば、企業としては、IT法務についての社内の見識を自ら高め、その取り組みを強化するしかありません。そこで、今回は、その取り組みへの一助としていただくために、IT事業と法務(主に知財)について、最も問題が生じるシステム開発におけるトラブルについてとその他有益と思われる連載や記事、を紹介する形でまとめます。
2、システム開発における受注者、発注者間のトラブル
(1) トラブルの起きやすい3つの場面
まず、システム開発におけるトラブルについては、以下の3つのトラブルの起きやすい場面があります。
①仕様書のトラブル
仕様書が存在しない、もしくは仕様書の欠陥に起因する開発トラブル
②プロジェクト管理に関するトラブル
システム開発プロセスの不十分な管理や、システムの受け入れテストの方法や期間、テストデータに関する明確な事前合意が存在しないことなどに起因するトラブル
③知的財産権の権利の帰属に関するトラブル
システム開発によってつくられたプログラムやその他の著作物上に成立する権利の帰属に関するトラブル
(2)3つの場面についての法的対策
つづいて、上記の3つのトラブルについて法務担当者が行うべき対策について、説明いたします。
①仕様書のトラブルについての対策
仕様書のトラブルには、本来発注者が作るべきものを、実際には受注者が作成することが、発生原因につながるケースが多いようです。そして発注者は、その仕様が自社の意図と違っていることを把握できずトラブルへと発展します。しかし、発注者がいくら「そんなはずではなかった」といっても、法律上、発注者が合意した仕様書に沿って作ってあれば、受注者は責務を果たしたことになってしまします。
したがいまして、「仕様書の作成義務がどちらにあるのか」を、契約に明記しておくことが不可欠です。さらに、開発だけでなく、成果物の製品検査においても、どこをチェックするのか、検収のためのテスト方法や合格の条件は何かを、開発契約で明確にしておくことが重要になります。
また、システム開発は、当初の請負契約通りに完了することはまれで、実際には開発途中で仕様に変更が生じることがほとんどになります。そうした変更は、変更契約を結び、常に文書化しておく必要があります。
参考:http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070601/273341/?itp_leaf_backno
トラブルを回避する契約・法律の基礎知識
第3回 仕様書の責任の所在を明確化
提案書に法的拘束力はない
②プロジェクト管理に関するトラブルについての対策
プロジェクト管理に関するトラブルについては、開発方法やテスト方法、検収の条件などを、両者合意の上で、契約に明記する必要があります。より具体的には、開発手法や開発手順、開発過程における諸々のチェック事項、チェック方法、チェックのために使用するデータ、既存ソフトとの整合性に関する責任範囲、検査合格基準、不合格だった場合の責任の帰属決定方法などを事前に明確に合意し、システム開発契約の契約条項の一部として盛り込んでおくことが必要となります。
また、双方のプロジェクト管理者が開発途中の意思決定に責任を持つことを徹底しなければなりません。例えば、開発に関する細かい取り決めやその変更、合意の追加などは、すべて両プロジェクト管理者間で行い、管理者以外の者による合意は、それが両社の社長間の合意でも効力を認めるべきではありません。なぜならば、両社の意思疎通の経路が複数になり混乱を生じるのを防ぐためです。この点も契約で明確に合意しておく必要があります。
参考:http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070601/273346/?itp_leaf_backno
トラブルを回避する契約・法律の基礎知識
第4回 プロジェクト管理手法の契約条項への明記が不可欠
③知的財産権の権利の帰属に関するトラブルについての対策
まず、著作権法の原則は、「著作者が著作権を有する」と規定しており(著作権法第14条および同法第15条第2項)開発行為者(=著作者)、すなわちシステム開発を受託したソリューションプロバイダが著作権を有することになります。
しかし、もちろん契約で定めておけばこの規定をオーバーライドできます。プロバイダの側からすれば、プログラムを他のユーザーに流用したいし、ユーザー企業側からすれば、開発費を自社が払っているのだから自社に著作権を帰属させたいという思いがあるため、対立するが交渉を経て、どちらかに著作権の帰属先を契約で定めることがトラブルを避けるために必要となります。
参考:http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070601/273347/?itp_leaf_backno
トラブルを回避する契約・法律の基礎知識
第5回 著作権の帰属規定は契約で移転できる
3、その他、IT事業と法務について有益な記事
以上のような、システム開発におけるトラブル以外にもITと法務においては様々な問題があります。法務担当者様は、下記の連載記事等を参考にしていただき、業務の役に立てていただけたらと思います。
〇「IT企業の法律実務」
(第45回までは、「松島淳也のIT法務ライブラリ」として、ITproで連載)
同連載では、著作権やシステム開発契約、ネットオークションに伴う種々の法律問題、個人情報の取り扱いなどについて取り上げ。
http://www.junya-matsushima.net/article/13759227.html
〇「判例で理解するIT関連法律」
契約や損害賠償、著作権に関する情報以外に、ドメイン名の不正登録やビジネスモデル特許、名誉棄損、パッケージソフトのライセンス契約などが取り上げられております。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070725/278287/(リンクは、29回までとなっておりますが、最終回の34回まで連載は続いております。)
〇「北岡弘章の「知っておきたいIT法律入門」」
気軽にIT法務の知識を深めるには格好のものだと思います。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060417/235451/
〇「トラブルを回避する契約・法律の基礎知識」
全体で6回ほどの短めの連載なので、IT法務に対する知識を短時間で吸収したい人には特に有益になると思います。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070601/273346/?itp_leaf_backno
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