株式会社ポケモン、中国企業との知的財産権侵害訴訟で勝訴 損害賠償額23億円に
2024/09/20   海外法務, 知財・ライセンス, 訴訟対応, 著作権法, 中国法, エンターテイメント

はじめに


株式会社ポケモンは、人気ゲーム「ポケットモンスター」のキャラクターを無断で使用したとして、2021年12月3日、中国企業を相手に、中国の裁判所に知的財産権侵害訴訟を提起していました。そして、9月13日、会社はこの裁判に勝訴したと発表しました。
中国の裁判所は、キャラクターを無断使用しゲームアプリを開発した中国企業に対し、1億700万元(日本円 約23億4000万円)の支払いを命じたといいます。

 

中国裁判所 運営者らの“著作権侵害”を認定


今回の知的財産権侵害訴訟は、人気ゲーム「ポケットモンスター」に関連した事業を行うポケモン社が2021年12月3日に提起したものです。

ポケモン社の発表などによりますと、原告は中国のゲームアプリ「口袋妖怪:复刻」の運営企業(以下、「中国企業A」)などです。

中国企業Aらは、ゲームアプリ内でポケットモンスターシリーズに登場するキャラクターをそのまま使用しており、まるで原作であると勘違いさせるほどに似ていたということです。報道などによりますと、このゲームアプリは2015年にリリースされ、1年間で約60億円を売り上げていました。

中国の裁判所・広東省深圳市中級人民法院は、2024年7月12日に下した判決の中で、運営者らが原作ゲームである「ポケットモンスター」シリーズの著作権を侵害していると認定。加えて、不正競争防止法の違反行為もあるとして、中国企業Aに損害賠償金1.07億元(約23.4億円)の支払い、その他3社に対し、損害賠償金の一部の連帯賠償責任の負担を命じました。この判決に対し、2社が控訴していると報じられています。

 

日本側からの訴えで、海外で刑事摘発の事例も


昨今、アニメや漫画の著作権侵害の被害が深刻化しています。そのため、各国で規制を強化する動きがあります。

2023年12月26日には、日本向けにアニメの海賊版サイトを運営していたなどとして、中国の裁判所で男女3人が著作権侵害の罪に問われ、有罪判決が言い渡されています。

主犯格の男は2008年から2023年2月までの間、営利目的でサイト名やドメイン名を変えながらサイトの運営を続けていたといいます。アニメの海賊版サイトは日本向けのものとしては最大規模で、無許可で配信された動画数は約4万5,000本、2023年に閉鎖されるまでの2年間のサイトアクセス数は3億回を超えていたということです。

判決では、不正に得た広告収入は日本円にして約3,700万円だったと認定されています。

今回のケースは日本のアニメ会社などが加盟する業界団体「コンテンツ海外流通促進機構(CODA)」からの刑事告発によって摘発されたケースでした。
日本側からの働きかけにより、海外で刑事罰が科せられたのは初めてということです。

 

著作物は国際条約でも保護


アニメや漫画、ゲームや音楽、映画などは「著作物」として国際的な条約で保護されています。著作物に国境はないと言われ、日本国内で発表されたとしても、海外でも同様にその著作権が保護されるべきであると考えられています。

国際的に著作権を保護する条約としては、「ベルヌ条約」と「万国著作権条約」が有名です。

それぞれ100カ国以上が参加しており、日本はどちらの条約にも加盟しています。これらの条約以外にも、貿易に関する知的財産権の保護を目的とする国際的な協定もあり、その協定で著作権が保護されることもあります。

これらの条約では、原則として、「国内で発表された著作物に与える保護と同等の保護を他の国で発表された著作物についても与えなければならない」とされています。

そのため、日本で発表された著作物が外国で利用される場合には当該国の著作権法、外国の著作物が日本で利用される場合には日本の著作権法が適用されます。

 

コメント


今回のポケモン社の勝訴により、改めて著作権保護の重要性を再認識する結果となりました。

かつては、国外での著作権侵害に対し泣き寝入りする傾向が見られましたが、近年の国家間の連携により、国外においても著作権保護を訴えられる環境が整いつつあります。

一方で、条約への加盟状況は、国によってまちまちです。また、仮に条約に加盟している場合でも、国によって著作物と認められるための基準や最低保護期間など、著作物の取り扱いが異なるケースがあります。

各国の著作権事情について、あらかじめ押さえておくことが重要です。

 

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