債権回収会社を利用して債権回収をする方法について
2017/05/24 債権回収・与信管理, 民法・商法, その他
1 はじめに
今回は、企業が取引先等から自力で債権を回収することが困難な場合に、債権回収会社を使用して債権回収を行う方法について説明します。
2 債権回収会社とは
債権回収会社(サービサー)とは、以下の業務に関して法務大臣の許可を得た民間の債権管理回収専門業者です(債権管理回収業に関する特別措置法2条2項・3項)。
①「弁護士」又は「弁護士法人以外の者」が委託を受けて法律事件に関する法律事務である「特定金銭債権」の管理及び回収を行う
②他人から譲り受けて訴訟、調停、和解その他の手段によって「特定金銭債権」の管理及び回収を行う
なお、「特定金銭債権」とは、「債権管理回収業に関する特別措置法(以下、サービサー法)」2条各号で規定されているもので、金融機関が有していた貸付債権や保証契約に基づく債権等がこれに該当します。したがって、「特定金銭債権」に該当しない債権を回収することは原則としてできません。
以前は、弁護士法により、弁護士または弁護士法人以外のものがこの業務を行うことは禁じられていましたが、不良債権の処理等を促進するためにサービサー法が施行されて、弁護士法の特例としてこのような民間会社の設立ができるようになりました。
3 債権回収会社へ債権回収を依頼するときの手続の流れ
(1)委託による方法
債権者企業が有する債権の回収を債権回収会社に委託した場合に、債権者企業は債権回収会社に手数料を支払うことになります。この場合、債権の帰属主体は債権者企業に帰属したままとなります。したがって、債権者企業は債権回収会社によって回収された債権額から手数料を引いた額を回収できます。
なお、主に委託による方法を利用しているのは金融機関等です。
(2)債権譲渡による方法
債権者企業が有する債権を債権回収会社へ譲渡すると、債権の帰属主体は債権回収会社へ移転することになります(民法466条1項)。したがって、譲渡人である債権者企業は債権回収会社から譲渡した債権の評価額を回収することになります。
4 債権回収会社の選定基準
債権回収会社の選定基準の1つとして、サービサー格付というものがあります。サービサー格付とは、サービサーがサービシング業務を遂行する能力を評価したものです。サービシング業務とは単に債権の管理・回収だけでなく、投資家等への回収金の引き渡しや回収状況の報告まで含んだ一連の業務を指します。
「サービサー格付」(株式会社日本格付研究所:PDFファイル)
格付機関の評価(「サービサー格付」:株式会社日本格付研究所)
5 債権回収会社に依頼するメリット・デメリット
(1) メリット
債権回収会社への委託や譲渡による一番のメリットは、自社の不良債権を処分できるという点にあります。
(2) デメリット
委託による方法の場合には、手数料がかかるというデメリットがあります。また、債権譲渡による場合には、債権回収会社が債務者の状況に応じて債権買取価格を値引きするケースが多いため、自社で回収業務を行った場合よりも損失が発生する可能性があります。なぜなら、債権回収会社は買取価格以上の回収を見込めなければ利益にならないからです。
「債権回収会社とは 債権回収会社の取り立てと依頼前の注意点」債権回収弁護士ナビ
6 具体的な事例
有名な債権回収会社として、預金保険法に基づき、政府・日本銀行・民間金融機関の共同出資で創設された認可法人預金保険機構の子会社である株式会社整理回収機構(東京都千代田区)が挙げられます。
(1)朝鮮総連に対する債権の回収
破綻した朝銀信用組合から債権を譲り受けた整理回収機構が、在日本朝鮮人総連合会から債権回収を図るために朝鮮総連中央本部(東京都千代田区)の土地と建物を競売にかけるよう、東京地裁に申し立てた事例があります。
(2)反社会的勢力に対する債権の回収
預金保険法101条の2第1項では、金融機関が「暴力団員」である債務者や保証人に対して有する貸付債権(「特定回収困難債権」)について、預金保険機構が買い取ることができると規定しています。そして、整理回収機構が預金保険機構から債権回収の業務を委託されており、債権回収を行っております。したがって、整理回収機構は他の債権回収会社とは異なり、「特定回収困難債権」の回収ができます。
7 債権回収会社一覧
債権管理回収業の営業を許可した株式会社は、平成29年4月3日現在で85社あります。
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