与信管理まとめ
2017/09/19 債権回収・与信管理, 民法・商法, 倒産法
~イントロダクション~
与信管理というと、法務担当者には縁のないことのように感じる方もおられるかもしれませんが、法務担当者も、審査法務部という形や、倒産対応・債権管理業務等を通じて、与信判断に関わることが考えられるとともに、一般的な法務としても、契約書審査を行うと同時に、取引先の企業審査の体制を整えることも重要と考えられますので、今回は、与信管理業務についてご紹介したいと思います。
~与信管理プロセス~
与信管理は、いかにリスクを抑えて利益を確実に確保するのかという視点の下、
①取引内容・条件のチェック
②取引先の信用力の分析
③取引先の信用力の判定
④契約(書)のチェック
⑤担保の取得等債権保全策の検討
⑥最終与信判定
上記について、与信限度額申請書を社内各部に回付し、最終決裁者が決済することで行われます。
このプロセスの内容を定めたものを「与信管理規定(ルール)」と呼びます。
与信管理規定の策定時の留意点としては、
経営者を巻き込むという観点から、①目的を明らかに、
経営者の理解を得るという観点から、②費用対効果を考慮し、
営業現場を巻き込むという観点から、③実態と運用を考慮
することが大切だといわれています。
より具体的なプロセスについては、下記のサイトが参考になりますので、ご紹介させていただきます。
・与信管理に必要なプロセス(リスクモンスター)
~格付け制度~
与信管理における格付けとは、一般に債券や債券の発行体などの信用力について、格付機関が財務状況などを調査・分析して評価(ランク付け)したもののことをいいます。
これを制度として、信用力の高低に応じて、4~10段階に仕分けし、格付ごとに取扱方針を明確にするのが格付制度です。
Ex:取扱方針
誰の決裁が必要か
金額はいくらまでか等定めることが考えられます。
Ex:信用力の高低
①最低:債務超過、粉飾決算の疑い
②要注意:支払遅延、連続赤字
③2ランクダウン:割止め情報、大口不良債権の発生等
④1ランクダウン:借入依存度50%以上
⑤加点:優良・上場企業の系列、無借金経営等
といった形で、信用力を評価していくことが考えられます。
格付け制度の構築については、下記のサイトが参考になりますので、ご紹介させていただきます。
・内部格付制度と信用リスク計量化(日本銀行)
・銀行の内部格付制度の実態(金融庁)
・内部格付制度(しきや会計&コンサルティング)
~与信限度額~
与信限度額とは、取引先ごとに決められた債権残高の最高額(取引先ごとに許容できる最高額)で、取引先が倒産した場合の損失の上限のことをいいます。
月中・月末のいかなるときも絶対に超えてはならない与信の最高額であり、基準としては、「必要」かつ「安全」であることが求められます。
必要な限度とは、月間取引額×回収期間で算出する実需に合った限度額
安全な限度とは、格付ごとに与信限度、取引シェアの上限の目安を定めるもの
と考えられます。
Ex:必要な限度>安全な限度のときは、厳格な対応をとることが考えられます。
与信限度額については、下記のサイトが参考になりますので、ご紹介させていただきます。
・与信限度額ってどう算出するの?(リスクモンスター)
・与信限度額(与信管理をはじめよう)
・与信限度額設定ガイドブック(トーショー)
・与信限度の設定(東京商工リサーチ)
~与信限度申請書~
与信限度額の設定は、会社設定の与信限度申請書に必要事項を記載して、申請し、決裁を得ることで行われます。そして、与信限度申請書は、与信管理上のポイントを現場に伝え、取引のリスクを一覧で分析できる貴重なデータとしての役割を果たします。
与信限度申請書のポイントとしては、
①取引先と直接商談し取引を把握している営業部に申請をしてもらう。
⇒営業担当者の意識向上が与信管理や回収の成果を高める上で重要と考えられます。
②申請内容を明確に記載できるようにする。
Ex:日時、申請者、決裁者、申請金額、次回見直し時期(1年以内)、申請内容等
③取引方針について記載する。
⇒営業部で取引先に対する重要度を評価することに役立ちます。
④仕入先や販売先も含めた当該取引の商流・物流を把握できるように取引全容図を記載するスペースを設ける。
⇒リスク分析や債権回収の際に非常に役立ちます。
⑤管理レベルが把握できる内容にする
Ex:債権債務ポジション、取得資料、取得担保、基本契約の有無、訪問回数の記載
与信限度申請書の記載に関しては、下記のサイトが参考になりますので、ご紹介させていただきます。
・与信限度額を申請しよう!(リスクモンスター)
~まとめ~
以上、簡単に与信管理について紹介させていただきました。与信管理については、経理・会計・税務などの知識、財務分析に関する技能、業界に関する知識、倒産・担保などの法制度に関する知識、マネジメントシステムや経営に関する知識や技能といった幅広い知識や技能が求められるため、担当者は、日々研鑚を積むことが求められます。
そして、適切な与信管理を行うためには、管理部門だけでなく営業部門の力が不可欠なため、両者の部署を超えた信頼関係の構築が肝要と考えられます。
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