法務初心者のための契約審査業務ごとの注意点(1/2)
2023/08/10
<目次>
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第1.契約とは
1.はじめに
本稿では、契約審査業務に関する注意点を説明していきますが、普段から契約審査を行っている方でも、「契約」というものについて深く考えたことのある方は多くはないのではないでしょうか。契約の意義や重要性について知ることで、日常的に行っている契約審査業務に対する理解をより深めることができるようになります。そこで、まずは「契約」についての解説から始めたいと思います。
2.「契約」及び「契約書」の機能
契約とは、「権利義務の変動に向けられた意思表示の合致」と定義され、契約当事者間の権利義務関係の変動に対する申込みとその承諾によって成立し、当事者の権利義務関係を変動させることに本質があります。そして、契約内容をどのようなものにするかは、基本的に当事者の自由とされ(これを「契約自由の原則」といいます)、当事者間で合意された契約内容は法的な拘束力を有します。法的拘束力を有する事項は、強制執行等の司法上の手続により、その実効性が担保されています。この自由度の高さと強制力の強さこそが、現代のビジネスシーンにおいて契約が不可欠な存在になっている大きな理由であると考えられます(株式会社LegalOn Technologies「ザ・コントラクト~新しい契約実務の提案~」商事法務、2023年、3頁)。
このような契約を文書化したものが、契約「書」となります。契約は口頭でも成立しますが(一部の例外はあります)、契約書を作成していない場合、当事者間で契約内容に疑義が生じてトラブルとなり、また、裁判上で契約内容の主張が困難になるといったリスクが生じます。例えば、貸金契約書を作成しないままお金を貸し付けてしまった場合、金額、利息や弁済期等の認識が食い違うどころか、お金を借りていないと反論されるリスクすらあります。契約書を作成することで、当事者間で合意した契約内容は明確になるためトラブルを防止することができ、また、裁判で証拠として提出することにより、裁判上での主張・立証を容易にすることができるようになります。
第2.ビジネスシーンにおける契約の重要性
契約は、旧来より社会制度において権利義務関係を把握するという重要な役割を担い、近年においてより一層その重要性を増してきました。
ビジネスシーンにおいては、新しい取引先、あるいは新規事業に関わる契約には必ずつきまとう不確実性を排除するために、取引先と契約内容を明確に合意し、それを契約書という形で残しておくことが非常に重要となります。また、上記のとおり、契約による合意内容は、法的拘束力を有し、自己の権利を確保することができる半面、大きな損害を生じさせるリスクをも包含するものです。そのため、企業間の契約においては、契約内容の吟味を怠って不利な内容の契約を締結してしまわないよう、注意深く契約審査をすることが求められます。
契約業務の本質は、形式的な作成手続や審査手続にあるのではありません。契約を通じて取引に関するリスクを排除、あるいは制御しようとする点にその本質があります。これは、ビジネスをリスクから守ることそのものであり、ビジネス価値の向上に直結する企業活動に不可欠な経営機能です(前掲書、p16)。
第3.契約ライフサイクルマネジメント
さて、契約について理解が深まったところで、以下では契約実務のプロセスについてみていきましょう。
1.契約ライフサイクルマネジメントとは
契約実務においては、「契約ライフサイクルマネジメント」という考え方があります。契約ライフサイクルマネジメントとは、契約の発生、依頼、受付、作成、審査、締結及び管理といった業務フロー全体を管理することをいいます。契約ライフサイクルマネジメントは、業務フローごとに生じる問題点を解消し、契約リスクを抑制するための方法として考えられています。
2.情報交換・共有の問題
契約に関する業務フローは、事業部、法務部や捺印担当部門の各担当者が関わるため、情報の交換・共有を円滑に行うことが求められます。部門間でのコミュニケーションがうまく機能しなかった場合、作業の遅滞や不要な労力や費用の発生等が生じるおそれがあります。また、不適切な内容で契約を締結してしまった場合は、本来負うべきでなかった法的リスクを負担することにもなりかねません。
情報の交換・共有に関する問題を解決するための方法としては、たとえば、チャットツールや契約書管理システムといったサービスの利活用が考えられるでしょう。一口に契約書管理システムといっても様々なものがあるため、導入にあたっては、価格や機能をよく吟味し自社にマッチしたものを選択することが必要です。
3.社内ルールの作成
契約ライフサイクルマネジメントに基づくアプローチとして「契約書管理規程等を作成し、契約に関する業務フロー全体の社内ルールを整備することが考えられます。
契約書管理規程において定める具体的な条項としては、「主管部門の責務に関する条項」や「契約書の作成及び審査」といったものが挙げられます。その他の例については、弊社の奥村弁護士が編集代表を務めた書籍「ザ・コントラクト」が詳細に解説をしていますので、こちらをご参考に作成をご検討ください。
第4.最後に
本稿では、概括的に、契約の意義や業務フローに対する考え方を解説しました。
次の記事においては、より具体的に、各業務フローにおける考え方や注意点等につき、解説をしていきます。
法務初心者のための契約審査業務ごとの注意点(1/2)
法務初心者のための契約審査業務ごとの注意点(2/2)
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※本記事掲載の情報は2023年08月10日現在時点のものです。
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