「禁酒令」から推察する基本的人権と公共の福祉
2012/05/31 法務相談一般, 民法・商法, その他
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事案の概要
福岡市の全職員に対し、高島市長は公私を問わず外出先での1カ月禁酒を要請した「禁酒令」を通知した。禁酒令の背景には、2006年の市職員(当時)の飲酒運転。による3児死亡事故、17日夜に市職員2名が起こしたとされる2つの暴力沙汰だ。
「批判を覚悟して不祥事の連鎖を止めるために決断した。これまでのやり方で変わらないなら私自身がリーダーシップを発揮することが大事と思う」。記者会見で高島市長は自らの名で通知した禁酒令についてそう語った。
期間は今月21日から6月20日までとなる。違反しても直ちに処分対象にはならないが、教育や指導が行われる。この間に飲酒し不祥事を起こせば、通常より処分が重くなる。結婚式や親類との付き合いでも原則禁酒だ。
現在のところ職員の多くは容認派らしいが、市民の間には「強権的」「私生活への介入」など批判も多い。地方自治に詳しい新藤東京都市研究所常務理事は「勤務時間外まで首長が口を挟む権利はない。禁酒令を認めれば私生活への介入は当然という風潮を招きかねない」と警鐘を鳴らしている。
効果についても疑問が持たれており、禁酒令は「公私を問わず、自宅外での飲酒を原則行わないものとする」としているが、きっかけの暴力事件は"自宅外"における飲酒が暴行の大きな要因ではない。酒癖の悪い人間ならば、自宅で酔って家族や近隣の住人などに暴行することもあるだろう。はたして「ショック療法」と言えるほどの効果があるのか。
また1万人以上の市職員が外出時に禁酒する影響は大きい。福岡名物の屋台は市役所周辺にも多く、屋台店主は「売り上げは3,4割落ちた」と椅子に座り込んだ。たとえ効果があったとしても、売上に影響を受ける飲食店にとってはたまったものではない。
コメント
今回の禁酒令は効果への疑問や飲食店への売り上げという論点もあるが、市長が市職員の私生活に対して通知したことは非常に大きな意味がある。公務員は一般的な国民よりもプライバシーが制限されることが容認されているが、飲酒という個人の生活への深い介入はあまり例がない。
職員達を市職員という集団として見るのではなく、個々人の集まりという視点で見るのも一つの考え方ではないだろうか。
今回の通知は公務員に向けてだけではなく、国民全体に向けられることもあり得る。一人一人が自分も対象になるかもという意識を持ち、個人の自由と公共の福祉のバランスについて議論をするのが良いだろう。
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