スマホ技術訴訟、アップルが勝訴。勝敗を分けたFRAND宣言とは?
2013/03/01 知財・ライセンス, 特許法, メーカー
事案の概要
スマートフォンなどの通信方法に関する特許を巡り、米アップル日本法人と韓国サムスン電子が争った訴訟の判決で、東京地裁は28日、「サムスンは特許権を乱用している」として、アップル側勝訴の判決を言い渡した。
今回の訴訟では、画像や音声などのデータを携帯電話で送信する際、『不必要なデータを省くことでサイズを小さくし、効率的に送信できる技術』を巡って、特許権の有効性や侵害の有無などが争われた。
判決では、特許の有効性を認めたうえで、サムスンが国際的な業界団体に対し、他社の特許使用申請に応じる旨の宣言(FRAND宣言)をしていたことを重視し、「アップルが使用許可を求めたのに、サムスンは誠実に交渉すべき信義則上の義務を尽くさなかった」として、アップルに対する損害賠償請求は「権利の乱用に当たる」と判断した。
FRAND宣言に基づき、特許権者の損害賠償請求権を認めないとする判決は日本で初めてで、世界的にも極めて珍しいとみられる。
コメント
事案の概要でもふれたとおり、FRAND宣言に基づき、特許権者の損害賠償請求権を認めなかった判決は世界的にも極めて珍しいとされている。
ではそもそもFRAND宣言とはなんなのか。
近年の情報通信分野において特許技術の標準化(シェア)は部品の共通化によるコスト削減等に欠かせないものとなっている。ある標準規格を実施する際に使用が回避できない特許(必須特許と呼ばれる)については、必須特許権者の権利者が多いと標準化技術を利用するための権利処理等が煩雑になる。
そのため、標準化団体(特許の標準化を進める業界団体)では、標準化技術をめぐる特許問題を解決するために、標準化団体内で『知的財産の扱いに関する規則』(IPRポリシー)を制定し、その中で、参加者が保有する必須特許を妥当な条件でライセンスするという宣言を義務付けている。
この『知的財産の扱いに関する規則』(IPRポリシー)では、一般に、保有する必須特許の番号、名称、および他社に使用許諾するかどうかをあらかじめ宣言することが定められている。
必須特許を使用許諾するか否かについては、標準化団体に所属する各参加企業が次の3つのうちの1つを選択する方法が採られている。
① 1号選択:無償で許諾(または権利放棄)
② 2号選択:公平・妥当かつ非差別的な条件で有償で許諾
③ 3号選択:その他(1号及び2号の扱いをしない)
この3つの選択のうち、②の「公平・妥当かつ非差別的な条件」というのがFRAND(Fair, Reasonable ,And Non-Discriminatory)条件であり、これに基づく宣言が『FRAND宣言』ということになる。
以上を踏まえると、『FRAND宣言』とは、要は標準化団体内での内部規則に基づく宣言である。
今回の判決は、そのような団体内での内部規則に基づく宣言の法的有効性が認められたものであり、今後も同様の基準で判断が下されていく可能性を示唆している。
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