企業が勝ち取った税条例無効 神奈川県が臨時特例企業税還付
2013/04/03 税務法務, 租税法, 税法, メーカー
事案の概要
神奈川県は2日、最高裁が違法と判断し、返還を命じた県の独自税「臨時特例企業税」について、3月末までに36社に対し納付税額と利息等を合わせた約380億円を返還した、と発表した。県に返還義務のある利息を含めた総額は約630億円。残る約250億円については、1日当たり約200万円の利息が生じるので、県は、返還額の多い企業から先に返還し、4月内に全ての返還手続を終えたいとしている。
本件返還の元となったのは、平成20年にいすゞ自動車株式会社が自社の納めた臨時特例企業税の返還を求めた訴訟。この訴訟で、最高裁は先月21日、臨時特例企業税を定めた条例の規定は地方税法の規定に反し違法・無効であるとして、いすゞ自動車株式会社の請求を認めた。地方自治体が設けた独自税を最高裁が違法と判断した初めての判決だった。
地方税法は法人事業税について過去の事業年度の欠損金繰越控除を認めている。しかし、神奈川県臨時特例企業税条例はこれを認めておらず、法人の税負担を均等化して公平な課税を行うという地方税法の趣旨に抵触するもので無効と判断された。
判例要旨
最高裁判所第一小法廷 平成22年(行ヒ)第242号
平成25年3月21日判決
「特例企業税を定める本件条例の規定は,地方税法の定める欠損金の繰越控除の適用を一部遮断することをその趣旨,目的とするもので,特例企業税の課税によって各事業年度の所得の金額の計算につき欠損金の繰越控除を実質的に一部排除する効果を生ずる内容のものであり,各事業年度間の所得の金額と欠損金額の平準化を図り法人の税負担をできるだけ均等化して公平な課税を行うという趣旨,目的から欠損金の繰越控除の必要的な適用を定める同法の規定との関係において,その趣旨,目的に反し,その効果を阻害する内容のものであって,法人事業税に関する同法の強行規定と矛盾抵触するものとしてこれに違反し,違法,無効であるというべきである。」
コメント
利益を追及しようとする企業と税収を確保しようとする行政との間では必然的にせめぎ合いが起こる。とはいえ、法令という後ろ盾と強制力を持つ行政の方が多くの場合で優位にある事は否めない。上の判例は、税の根拠となる条例自体の違法・無効を宣言した初めてのものであり、今後の企業と行政との関係に一石を投じるものと言える。
今回、神奈川県は利息の支払いや還付手続に費やすコスト等の点で、大きな損失を抱える事となった。これを受けて、今後、各地方自治体は、税条例制定においてより慎重を期す筈である。行政と訴訟で争う事には敗訴可能性や訴訟費用等を含めた大きなリスクが伴うが、それを覚悟した上で訴訟に踏み切ったいすゞ自動車株式会社が勝ち取ったものは大きい。企業にとって、戦う姿勢を忘れない事は非常に重要である。
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