改正著作権法成立、出版権の拡充は海賊版退治の有効打となるか?
2014/04/30 知財・ライセンス, 著作権法, その他
事案の概要
これまで紙媒体での書籍のみを対象としていた出版権を電子書籍にも拡大し、著作者と契約を結んだ出版社等の事業者が、デジタル海賊版の差し止めを行えるようにする改正著作権法が4月25日、参議院本会議で可決・成立した。来年の1月から施行される。
出版権とは、著作者など複製権を有する者との契約により設定される権利であり、出版権を設定された者は当該著作物を複製する権利を専有することが著作権法上に定められている。本改正は出版権を紙媒体での「出版」に限らず、CD-ROMなどの電子媒体上に複製した著作物の頒布の権利や、インターネットを用いた著作物の配信の権利に関しても専有を可能にする内容となっている。また、出版権には複製元を受け取ってから6ヶ月以内に出版する義務があるが、インターネット配信についてもこれと同様の義務が定められた。
改正により出版権を有する出版社等は著作権者本人に代わってデジタル海賊版による著作権侵害への対抗が可能となり、自ら差し止めを求められるようになる。電子書籍の推進にあたって海賊版への対処は以前から問題とされており、出版社が原告になれる制度は以前から出版社側により求められてきたところであった。
なお、改正前から著作権の全部又は一部の譲渡については認められているものであり、本改正において注目されたインターネット上の配信などの権利についても個別で自由に著作者と出版社の間で契約することが可能である。今回のような出版権に関する議論とは別に、電子化まで含めた独占出版契約のような動きは既に存在している。(注)
コメント
書籍の電子化の潮流により、著作者への著作権収入を阻害するデジタル海賊版への対処は急務となってきている。今回の著作権法改正は出版社にデジタル海賊版への直接の差し止め請求権を出版権によって担保することで、書籍の電子化時代に対応する狙いがあるようだ。しかし上記のように、そもそも著作権に関する契約は本改正のような問題についても個別に契約を結べば対応可能であり、改正は出版権設定だけでこの手間を省くためのものに過ぎないように見える。また、国内法だけでは依然として海外で配信される海賊版には意味を持たず、コストの大きい現地での訴訟に頼らねばならない面がある。海賊版を今後どうやって有効に駆逐していくかは、今後の法改正と各出版社等の動向を見ていく必要があるだろう。
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