産経新聞支局長の起訴に見る、韓国司法の問題点
2014/10/15 海外法務, 海外進出, 外国法, その他
産経新聞支局長在宅起訴までの流れ
10月8日、産経新聞の前ソウル支局長の加藤達也氏が情報通信網法上の名誉毀損罪で韓国のソウル中央地検に在宅起訴された。
前支局長は、8月3日に産経新聞のWEB版に朴槿恵大統領に関する記事を掲載。これが朴大統領の名誉を毀損したと判断されたことが理由である。
問題となった産経の記事は、朝鮮日報の「大統領をめぐるウワサ」というコラムを紹介する形で書かれている。この記事によれば、韓国の旅客船セウォル号が沈没した4月16日の当日に、朴大統領が7時間にわたって行方不明になっていたという事実があり、大統領はその間、男性と密会していたのではないかという関係筋の「ウワサ」があるという。
この記事の掲載後、産経新聞に対して韓国大統領府から抗議があり、加えて在日本の韓国大使館から記事の削除要請があった。
しかし産経側はこれに応じず、8月8日にソウル地検が同記事による名誉毀損の容疑で、前支局長に地検への出頭を命じた。前支局長は、これに応じなかったため60日以上に及ぶ出国禁止処分がとられていた。更にこの出国禁止処分は3ヶ月間の延長が申請されている状況である。
前支局長は8月18日には地検の要請に応じ出頭し、事情聴取が行われていたが、最終的に在宅起訴にいたった。初公判は11月13日にソウル中央地裁で開かれることになっている。
韓国司法の問題点
今回の産経新聞前支局長の起訴を巡っては「言論の自由」の侵害であると海外から批判の声が上がっている。韓国国内においても、名誉毀損を立証するのは困難であるとの見方もある。
また、産経の記事は朝鮮日報のコラムを引用する形で書かれているが、朝鮮日報については法的措置はとられていない。
確かに、産経の記事は元ネタの朝鮮日報よりも、踏み込んだ内容とはなっているものの、両者の法的な扱いを区別するほどの決定的な違いはないように思える。
そもそも、韓国司法の最大の問題点は、司法権の独立が、極めて不完全な点であろう。上記産経新聞の支局長に対しても、韓国大統領府は常々、刑事責任追及の可能性を指摘していたことからして、検察が政権の意向を汲んで訴追したものと考えられる。また裁判所も政治的な判決を下す傾向が見られる。対馬から盗難された仏像を巡って、返還差し止めの決定がなされたことは記憶に新しい。
韓国司法の問題は、大統領制の問題ともリンクしているように思える。韓国の大統領は任期中に不正蓄財や汚職を行う者が多い。そのため、自らへの捜査の手を防ぐために司法に過度の影響力を行使しがちである。司法の独立を保つためには、韓国の大統領制のありかたも考える必要がある。
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