〈最高裁が初めての判断〉公金支出の透明性確保を狙う
2014/10/31 法務相談一般, 民法・商法, その他
事案の概要
岡山県議会議員の平成22年度の政務調査費について、29日、最高裁は、条例がなくとも1万円以下の支出の領収書の提出を命じる旨の決定をした。岡山県の市民団体は、岡山県議会議員の政務調査費について、不当な支出があるとして、県知事に返還請求するよう求めていた。その際、市民団体側が県議会議員の支出の領収書を証拠として開示するよう求めていたが、岡山県の政務調査費の交付に関する条例では、1万円以下の領収書を収支報告書へ添付することは義務付けられていない。そこで、1万円以下の支出の領収書を開示すべきかが争われた。
県議らは、1万円以下の支出の領収書は、開示されることが条例上予定されておらず、開示されれば調査研究活動が阻害されると主張していた。これに対し、最高裁は、県が平成21年に条例を改正し、1万円を超える政務調査費の支出について収支報告書への領収書添付を義務付けたのは、「調査研究活動の自由をある程度犠牲にしても、政務調査費の使途の透明性の確保を優先させるという政策判断がされた結果と見るべき」とした上で、1万円以下の支出の領収書の添付を不要としたのは「事務の負担に配慮する趣旨」であって、「調査研究活動の自由の保護を優先させたものではない」とした。そして、1万円以下の支出の領収書も、外部への開示が予定されていない文書とはいえないとして、領収書の提出を求める市民団体の申し立てを認めた。
政務調査費について、条例で1万円以下の領収書の提出を義務付けていないのは、全国の都道府県議会で岡山県議会のみであり、本最高裁決定は、1万円以下の支出の領収書について、開示すべきと判断した初めてのものとなる。この決定をうけて、岡山県議会の最大会派である自民党県議団は、すべての支出について領収書の提出を義務付ける条例改正案を11月に提出する方針である。
なお、今年の5月、広島高裁岡山支部決定は、1万円以下の領収書が開示されれば、調査研究活動が阻害されたり第三者のプライバシーが侵害されたりする恐れがあるとして、領収書の提出命令を出した岡山地裁の決定を取り消した。本最高裁の決定は、広島高裁の決定を破棄し、岡山地裁の決定を維持した形となる。
コメント
政治費用に関する不祥事が世間の注目を集める中、今回の決定により、最高裁が政治費用の透明性の確保を強く要求したものといえる。今回の決定を受けて岡山県の条例も改正される見通しであり、すべての都道府県が条例で、金額に関わりなく領収書の提出を義務付けることになるため、地方議員の政務調査費の透明性は全国的に一定程度確保されることとなりそうだ。しかし、岡山県以外の都道府県で条例を整備しているにもかかわらず、公金支出に関する複数の疑惑が現に存在しているのもまた事実である。公金の使途がいかなるものかは、常に監視すべきものであり、透明性を確保するため、定期的に住民が監査できるようにするなど、さらなる模索が必要となろう。
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