あなたの仕事は大丈夫?将来消える仕事、消えない仕事~企業の法務担当者の未来は・・・~
2014/11/12 法務採用, 民法・商法, その他
企業の法務職は将来なくなってしまうのか!?
昨年から今年にかけて、複数の雑誌やウェブメディアで「将来なくなる職業」の特集が話題です。これらの記事は主に、英オックスフォード大学准教授による論文(※1)や、米国の経済学者たちがまとめた本(※2)をソースとするものですが、いずれの記事も、近年のコンピュータ技術やロボットテクノロジーの発達は目覚しく、単純な反復作業のみならず、これまで人間にしかできないと思われていた仕事までもロボットなどの機械に代わられようとしている、と警鐘を鳴らしています。たしかに近年におけるスマートフォンの爆発的な普及や、今年も、米Googleが自動運転カーのプロトタイプを発表し一般人を対象とした市場テストの様子を公開、さらに携帯大手のソフトバンクが、人間相手に会話をする世界初の感情認識パーソナルロボット「Pepper」を発表し実際に店舗に配置するなど、私たちの日々の生活の中でも、その高度なコンピュータ技術やロボットテクノロジーの発達を実感することが多くなってきました。
そこで気になるのが、「自分の職業は果たしてロボットに取って代わられてしまうのか」ということ。そこで、今回は企業の法務職は果たして、10年後なくなってしまう仕事なのか、それとも生き残る仕事なのかを調べてみました。
発表!近年著しく就業者が減った仕事
2013年に東洋経済オンラインが掲載した「2030年 あなたの仕事がなくなる」という記事の中で、同誌は2000年から2005年に増加、また、減少した職業別の就業者数をランキング形式で発表しています。これによれば、高齢化を背景として、介護職員が40万人近く増加したのを筆頭に、ホームヘルパーや看護師などの介護・医療従事者が増加人数トップ5に入った一方、会計事務員は約31万人、商品販売外交員は約30万人その数を減らし、この2職種がワースト2となっています。この人数減少については、オフィスにおける会計ソフトの普及や、ネット通販の一般的な広がりが主な原因と考えられ、まさに、コンピュータテクノロジーが人間の仕事を奪った例といえるでしょう。ちなみに、同誌の調査では、企業の法務部門、弁護士、パラリーガルといった法律職従事者については、増加数、減少数ともにランキング圏外でした。
今後なくなってしまう職業は?
また、週刊現代2014年11月1日号は、上記オックスフォード大学准教授オズボーン氏の論文「雇用の未来」の中で発表した、コンピュータに代わられる確率が90%以上の仕事を掲載しています。ここでも東洋経済オンラインで既にその就業者数の減少が指摘された会計事務員や訪問販売員などの商品販売外交員がそのリストに挙げられています。しかし、注目すべきは、銀行の融資担当や保険の審査担当、給与・福利厚生担当、さらにクレーム処理・調査担当など、会計以外のオフィスワークも「今後なくなる確率90%以上の仕事」としてこのリストに掲載されていることです。これは、単純作業を繰り返す仕事のみならず、高度な知識や経験、そしてそれに基づく判断力などが必要とされてきたホワイトカラーの仕事も、もはやその存在が安泰ではないことを示しているといえるでしょう。
さらに、同誌の中で、オズボーン氏は近年目覚しく発達しているビッグデータ(インターネットの普及や、コンピュータの処理速度の向上に伴い生成される、大容量のデジタルデータ)の処理及び解析技術、そしてその活用により、「これまで非ルーチン作業だと思われていた仕事をルーチン化することが可能になりつつある」と指摘しています。そして、その具体例として、米国のニューヨークメモリアルスローンケタリングがんセンターが米IT大手のIBMの人工知能コンピューターを活用して、コンピュータが何十万、何百万という医療報告書や患者記録、臨床試験、そして医学雑誌を分析し、患者個々人の症状等を他の患者と比較して最善の治療計画を作成していることを紹介。また、法律の分野も例外ではなく、アメリカでは、裁判前のリサーチのために数千件の弁論主意書や判例を精査するコンピュータが既に活用されており、その結果、パラリーガルや契約書専門、特許専門の弁護士の仕事はすでにコンピュータにより行われているそうです(パラリーガル・弁護士助手については、上記の「今後コンピュータに代わられる確率が90%以上の仕事」のリストに入っています)。
今後ビジネスパーソンが生き残っていくためには
いずれの記事においても、コンピュータやロボットに取って代わられることのない、今後もその存在が安泰な仕事は、今までにないビジネスを作ったり、感動的な音楽や文学を生み出す等、創造的・クリエイティブな仕事や、コンピュータで自動化することが難しい反復的でない肉体労働、例えば看護師、美容師といった職業のようです。それでは企業の法務職はというと、今のところ「今後なくなるかもしれないリスト」等には挙がっていませんが、上記のように、高度な知識が要求されるホワイトカラーの仕事や、弁護士といった法律専門職も決して安泰ではないことからすれば、その仕事の存在が将来にわたって保証されているとは言い切れないでしょう。
Googleの創業者であり、現CEOのラリー・ペイジは、同社の検索エンジンで得た巨額の利益をこの先10年、20年、世界全体の効率をあげるために使う旨を述べ、人工知能の急激な発達により、現在行われている仕事のほとんどがロボットにより行われるであろうことを示唆しています。そして、ペイジは「あなたはこんな現実は嫌だと思うかもしれないけど、これは必ず起こることなんだ」と述べ、かのビル・ゲイツも機械に代行される未来は確実に訪れると警告しています。
しかしながら、どんなにコンピュータやロボットが私たちの社会生活に進出しようと、上記のようなクリエイティブな仕事や、非反復的な肉体労働、さらに人の心に寄り添う仕事をそれら機械がすることはできません。そしてまた、仕事の現場から人間が一切いなくなる、ということもないでしょう。
企業の法務業務に関して言えば、たしかに契約書面のチェックや外国語契約書の翻訳といった「書面」を相手にする業務は、コンピュータによる膨大な類似契約書データの蓄積及び分析、そして翻訳ソフトの発達によって、人間ではなく機械がその多くを担当する未来がくるかもしれません。しかし、コンピュータや機械は情報を集約することはできても、人間から「聞き出す」ことはできません。したがって、社員の抱える大小様々な法的な悩みを聞き出したり、営業担当者から法的懸案事項を詳細かつ的確に巧みに聞き出して、そのソリューションを考え、それをわかりやすく説明するなど、“ヒアリングし、最善策を判断し、丁寧に説明する”といったコミュニケーション能力が要求される「人」を相手にする業務は、どれだけテクノロジーが進歩しようと、コンピュータより人間の方が優れているといえるでしょう。
そう考えると、企業のビジネスパーソンや法務担当者が、ロボットやコンピュータと仕事を奪い合う来るべき未来を生き残る鍵は、専門知識や語学の習得のみならず、機械には決して代替不可能な「人間力」をさらに向上させることなのかもしれません。
(※1)マイケル・A・オズボーン「雇用の未来-コンピューター化によって仕事は失われるのか」
(※2)エリック・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィー共著「機械との競争」
関連サイト
2030年 あなたの仕事がなくなる 東洋経済オンライン
オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」702業種を徹底調査してわかった 現代ビジネス
2020年 なくなる仕事 現代ビジネス
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