全加工食品の原産国表示へ、食品表示基準改正への動き
2017/08/15 コンプライアンス, 広告法務, 法改正
はじめに
内閣府消費者委員会は10日、全ての加工食品の原材料につき原産地表示を義務付ける食品表示基準の改正案を発表しました。早ければ今月中に新基準が出されるとのことです。今回は食品表示法による表示規制の概要と改正のポイントについて見ていきます。
食品表示法による規制
食品に関する安全性と消費者の合理的な食品選択を確保し、国民の健康と食品の流通の円滑化を目的として食品表示法では食品販売に関し事業者に一定の規制を設けております(1条)。4条では食品に関する名称、アレルゲン、保存方法、消費期限、原材料、添加物などに関する「食品表示基準」を内閣総理大臣が内閣府令として定めることとし、事業者はその基準に従うことが義務付けられております(5条)。この食品表示基準に従った表示を行わない事業者に対しては、内閣総理大臣または農水大臣は表示基準を守るよう指示することができ(6条1項)、その指示に従わない場合は措置命令を出すことができます(同5項)。緊急の必要がある場合には食品の回収その他の措置を命じることもできます(同8項)。またこれらの指示や命令がなされた場合は必ずその旨公表がなされることになります(7条)。食品表示基準に違反した場合には2年以下の懲役、200万円以下の罰金、またはこれらの併科(18条、19条)、措置命令に違反した場合は1年以下の懲役、100万円以下の罰金(20条)となっております。違反の疑いがある場合には誰でも内閣総理大臣等に措置を求めることができ(12条)、適格消費者団体は差止請求を行うことができます(11条)。
原産地表示について
内閣府の告示として出される食品表示基準には原材料やアレルゲン、保存方法、添加物などの表示方法が詳細に規定されておりますが、その3条2項および別表15では一定の加工食品における原料の原産地表示が義務付けられております。対象となる品目は①原産地に由来する原料の品質の差異が、加工食品の品質に大きく反映されると一般に認識されており、②製品に占める重量の割合が50%以上となるものが選定されます。現在対象となっているのは乾燥野菜果物、塩漬け野菜類、緑茶、豆類、調味・加工した食肉または魚類、塩漬け魚類など22の食品群と、さらに個別に鰻、かつお削り節、冷凍野菜食品、農産物漬物の4品目が指定されております。
改正案のポイント
今回の改正案では全ての加工食品が対象となります。そして加工食品における重量割合1位の原材料について原産国表示が必要となります。そして原産国が複数ある場合にはその重量の多い順に記載することになります。たとえばロースハムの場合は原材料名のところで「豚ロース肉(米国、カナダ)」とします。例外として仕入先が頻繁に変わる場合は「(米国またはカナダまたはその他)」などと記載することができます。果汁などの中間加工原材料は「米国製造」とし、3カ国以上となる場合はまとめて「輸入」とすることができるとしています。
コメント
現行の食品表示基準では比較的加工度の低い製品について原産地表示の対象とされております。農水省のHPによりますと調味またはその他の加工した食肉とは、塩コショウやタレに漬けた肉、茹でた肉、蒸鶏、鶏ささみたたきといったものであり、ロースハムやハンバーグなどの調味料を加えて加熱したものは対象外となっております。今回の改正が実現した場合、これらの加工度が低いものだけでなく全てが対象となり、重量割合が一番大きいものについて原産地表示が必要となります。また複数国の場合など例外規定が多く加工食品業界では相当混乱することが予想されます。それを踏まえ移行期間として5年間が予定され、2022年4月に完全に行こうすることになるとされております。またこれまで原産地表示が不要であった加工度の高い食品の製造販売していた場合でも、ほとんどの業者が対象となることになり対応に相当のコストを強いられることが予想できます。自社で加工食品を扱っている場合は、まず最も重量割合の高い原材料について仕入れ先の状況などを把握しておくことが重要と言えるでしょう。
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