まつげエクステンション専門店 顧客カルテ持ち出しをめぐる裁判で敗訴
2021/07/22 コンプライアンス, 情報セキュリティ, 不正競争防止法, その他
はじめに
株式会社リリーラッシュは、まつげエクステンションの専門店を都内に展開する企業であり、同社の従業員の退職をめぐり訴訟を提起していましたが、令和3年6月24日に知的財産高等裁判所は同社の請求を棄却しました。同社は従業員の退職に関連する訴訟を計3つ提起していましたが、現在すべて敗訴しています。
事案の概要
1つ目の訴訟は退職した元従業員が顧客カルテを不正に持ち出し、近隣の店舗に転職したことから競業避止義務にあたると訴えたものでした。当該訴訟は令和2年1月に上告棄却され、敗訴が確定しています。
二つ目の訴訟は、元従業員を違法に引き抜いたことを理由とし転職先企業を訴えたもので、令和3年4月に東京高裁が控訴を棄却し敗訴が確定しています。
そして、本件訴訟は、従業員が顧客カルテを勝手に持ち出したことが不正競争防止法に違反するとして、損害賠償請求と行為差止請求を提起したものでしたが、秘密管理性を欠いていることを理由として請求棄却されました。
秘密管理性とは
不正競争防止法に基づき損害賠償・差止請求をするためには、秘密管理性・有用性・非公知性の3要件を充足する必要があります(同法2条6項)。
そして、秘密管理性とは、その情報にアクセスできる者が限られており、アクセスした者が秘密であると認識できることを意味します。
本件においては、同社の従業員が私用のスマ―トフォンを使用し顧客カルテをグループチャットで共有しており、また、従業員であれば誰でも顧客カルテをみることができた等の理由から秘密管理性が認められないと判断されたとみられます。
秘密管理性を確保する方法
秘密管理性が認められるには、従業員等が秘密であると認識していることが必要です。そのため、社内規程等で秘密情報に関するアクセス権限者を限定する旨を明記しておいたり、秘密文書に「社外秘」等のシールを張り付けたり、秘密情報を保管する場所に「撮影禁止」と張り紙をしたり、秘密情報の閲覧には鍵やパスワードをかけたりしておくことが望ましいです。
コメント
紙やフロッピーディスク等の媒介物が元従業員に持ち出されれば、社外秘の秘密が持ち出されたとわかりやすいですが、そうでない場合にはそもそも秘密情報が漏えいしていることにすら気づかないという場合もありえます。
企業法務従事者としては、秘密情報の管理に粗がないか今一度見直し、秘密情報が漏れ企業にとって痛手とならないよう、秘密管理性の確保を徹底しましょう。
新着情報
- 弁護士
- 松本 健大弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階
- ニュース
- Googleに排除措置命令へ、公取委がGAFAへ初の措置2025.1.6
- 世界で最も利用されているインターネット検索エンジンを提供する米グーグル。同社が、独占禁止法に違...
- 解説動画
- 江嵜 宗利弁護士
- 【無料】今更聞けない!? 改正電気通信事業法とウェブサービス
- 終了
- 視聴時間53分
- まとめ
- 中国:AI生成画像の著作権侵害を認めた初の判決~その概要と文化庁「考え方」との比較~2024.4.3
- 「生成AIにより他人著作物の類似物が生成された場合に著作権侵害が認められるか」。この問題に関し...
- 弁護士
- 目瀬 健太弁護士
- 弁護士法人かなめ
- 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号
- セミナー
- 潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- 優秀な法務パーソンを自社に迎えるには ~法務専門CAが語るリアル~(アーカイブ)
- 2025/01/22
- 12:00~12:30
- 業務効率化
- Mercator® by Citco公式資料ダウンロード
- 解説動画
- 大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間
- 業務効率化
- Araxis Merge 資料請求ページ