政府提言 補助金に相当する関税をかける相殺関税を促す
2021/09/02 通商法関連業務, 租税法, 税法, その他
はじめに
中国・韓国等からの製品が他国政府から補助金を受けて不当に安く日本に輸入されたとみられるケースが多いことから、国内企業を守るべく、8月30日に、政府は補助金に相当する関税をかける相殺関税の活用を企業に促すという提言をしました。
事案の概要
補助金相殺関税(Countervailing Duty,CVD)措置は、他国政府の補助金を受けた輸入品が国内産業に損害を与えている場合、当該輸入品に対して補助金相当額を相殺する関税を課すことができる世界貿易機関の協定上認められた措置です。
昨今、グローバルサプライチェーンの進展に伴い貿易構造が複雑化する中で、大規模な産業補助金など市場歪曲的な措置への対抗策として、CVD措置の発動件数が世界的に増加しています。
日本におけるCVD措置の活用の可能性について検討していくため、経済産業省では、本年2月から有識者へのヒアリングを実施し、CVD措置の活用に向けた課題を整理してきました。
ヒアリングの結果を踏まえ、産業構造審議会通商・貿易分科会 特殊貿易措置小委員会において、日本におけるCVD措置の活用に向けた課題と対応の方向性について議論し、提言として取りまとめました。
提言の内容をさらに詳しく
提言では、国内産業がCVD措置の申請をするために必要な他国の補助金の情報の入手が困難であるといった課題について、各国の貿易救済調査当局間で補助金に関する情報等を共有する仕組みを構築し、収集した情報を経済産業省から産業界に積極的に情報提供するとともに、個別案件の事前の相談についても相談の初期の段階からきめ細かく対応していくことが重要といった指摘がなされました。
また、CVD措置に対する日本企業の認知度不足を解消するため、CVD措置の周知に向けた企業への広報活動の必要性が指摘されました。
日本におけるCVD措置の活用実態
CVD措置を講じるにはハードルが高いと思われる要因として、適用を申し立てる企業が他国の補助金の実態を立証しなければならなく企業側の負担が大きいことが挙げられます。
そのため、国内では2006年に韓国の半導体メーカーに対して適用された一件しか活用されたことがありません。
コメント
現代において、企業の規模の大小を問わず海外から原材料や製品等を輸入することは珍しくありません。今回の政府の提言は国内産業が海外企業の安い原材料・製品等に競争で負け、国内産業の国際競争力の低下を防ぐためのものですが、取引の当事者である日本企業からすると、手間をかけてまで取引先に関税の負担を増やすことはなかなか望まれないことだと思われます。もっとも、国内産業を保護するために積極的なCVD措置の活用が望まれます。
企業法務従事者としては、CVD措置の理解に努めて、未だCVD措置を活用していないならば、活用すべきでしょう。
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