社会福祉法人サンフェニックス 民事再生手続開始決定を受ける
2021/10/06 事業再生・倒産, 倒産法, その他
はじめに
広島県で運営されている社会福祉法人サンフェニックスが民事再生手続の開始決定を受けました。
事案の概要
同社は2015年の年収入高は約20億9700万円を計上していたものの、その後の積極的な設備投資により借入金が増加する一方で、先行投資負担から連続欠損が続き、2021年には決裁難を生んでしまい、信用不安を増大していきました。その結果、一部施設の休止を余儀なくされ、今回の措置となりました。負債は2020年3月期末時点で約64億円となっております。
民事再生手続の概要
民事再生手続は倒産手続の一種ではありますが、法人が消滅するわけではなくあくまで法人格を維持しながら経済的な立て直しを図るための制度です。債権者からすると、債務者に対して自己が有する債権が変更(減少)されてしまう点で不利益ではありますが、再建手続よりも清算手続の方が債権者にとって利益が大きいならば再建手続を利用することはできません(清算価値保障原則)。
民事再生手続とスポンサー
民事再生手続では法人を維持しつつその営業利益によって債権者に弁済をしますが、一度経営が傾いた法人を経済的に更生させるのは一筋縄にはいきません。そのため、スポンサーを募り再建手続を行うことになります。いかなる手続きを利用するかは様々な事情を考慮して決しますが、手続開始時点でスポンサーの当てがなければ、再建手続を行うことが困難であると判断され清算手続を行う傾向にあります。そうであるならば、本件のサンフェニックスもスポンサーの当てがあったのではないかと推測されます。もっとも、手続の途中でスポンサーが降りてしまったりすると、事業の立て直しが困難であると判断されて清算手続に切り替えられるといったこともあります。このように再生手続から破産手続に切り替わることを牽連破産と言います。
コメント
倒産手続において担保権者は担保目的物の価額の範囲内で手続外での弁済・配当を受けられるという特別扱いを受けます。企業法務従事者としては、取引先の会社が何らかの倒産手続を利用し始めたら、まずは担保権の有無を確認し、どれだけ弁済・配当を受けられるのかを早期に把握できるようにしましょう。そうすることで、自社の資産がいくらか明確になり経営判断にも大きく影響してくることでしょう。
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