安全配慮と店側の責任
2021/10/08 危機管理, 民法・商法, その他
はじめに
6日午後11時ごろに東京都豊島区西池袋の飲食店の店内で爆発が起き、付近を通行中の30~40代の男性3人が怪我を負い病院に搬送されました。
事案の概要
東京消防庁によると、爆発したとみられるボンベとカセットコンロのほか、店内の内壁が8平方メートルにわたり焼損したようです。池袋署によると、当該飲食店は当時営業しておらず、店内に人はいなかったそうです。
店側の法的責任
本件は事実関係が不明確ではありますが、もし店側の過失で客又は通行人の生命・身体を侵害した場合にどのような法的責任を店が負うことになるのかを説明いたします。まず、客との関係では店側は債務不履行責任と不法行為責任を負う可能性があります。債務不履行責任とは契約により生じた債務を履行しない場合に負うこととなる責任のことをいうため、店側と客とで生命・身体を害さないという契約を結んでいるわけではないことから債務不履行責任を負うことはないと思われる方もいるかもしれません。しかし、店側は信義則上(民法1条2項)客の生命・身体を害さないという付随義務を負うと解されることから、客は店側に債務不履行責任を問いうるといえます。また、生命・身体を害された場合の不法行為責任と債務不履行責任とでは立証責任の点で後者の方が客にとって有利となるため、債務不履行責任を追及する実益があります。次に、通行人が損害を負った場合には、通行人は店側に不法行為責任を追及しえます。客の場合とは異なり、通行人と店側とで何ら契約が締結されていないので、債務不履行責任を追及することはできません。
店側の過失の判断
上記の責任は店側に故意・過失がなければ認められません。では、どのような場合に過失が認められるのか説明します。コンビニで客が足を滑らせて転倒し怪我をしたため客が店の責任を追及した事案において、原告である客の損害賠償請求は棄却されました。コンビニ側は客の安全に配慮しており過失が認められないという理由により裁判所は原告の請求を棄却しました。具体的には、①当時店舗の出入り口付近には足ふきマットが2枚設置されており、来店時に可能な限り水や汚れを取り除けるよう配慮していたこと②事故現場の売場には冷蔵ケースもなく、商品の性質上水滴がたまるような原因はなかった上、利用する客が少ないなどの理由から転倒場所の床が濡れていたとは考えられないこと③雨天時には通常よりも滑りやすくなっていることを来店客側も認識しているはずであること、以上の理由から店側に過失はなく、むしろ多少滑りやすくなっていることは来店客も理解しているはずで、通常の注意力をもってすれば転倒は防げたはずであると判断されました。
コメント
客の安全に配慮した店づくりをしなければ、思わぬところで損失を被ることとなります。企業法務従事者としては、客が怪我をした場合に店側はどのような法的責任を負い得るのか、店側の過失が認定され得るのはどのような事案なのか、現在の店舗に安全性が具わっているか等、再考するいい機会かもしれません。
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