農林水産省による合同会社リュウセイの生鮮水産物の不適正表示に対する措置
2022/03/28
はじめに
農林水産省は2022年3月9日付けで、熊本県宇土市に本社を持つ合同会社リュウセイに対して食品表示法に基づく措置を実施しました。中国産もしくは韓国産のアサリを熊本産と偽って表示したことが問題視されたものです。ここでは、措置までの経過や概要について取り上げていきます。
農林水産省の立入検査
農林水産省九州農政局による、合同会社リュウセイへの立入検査は、2021年11月11日から2022年2月16日にかけて行われました。立ち入り検査は食品表示法第8条第2項に基づくもので、立ち入り検査の結果、原産地が中国産もしくは韓国産のアサリを「熊本産」として表示として表示していること、上記の「熊本産」表示のアサリを、2020年6月18日から2021年5月3日までの間に中間流通業者20社に販売していたこと、期間中に販売した量は926,488kgにのぼることが明らかになりました。
およそ1年ほどは熊本産と表示した状態で中間流通業者に販売されていたということで、鮮魚売り場などでは、「熊本産」と表記された中国産や韓国産のアサリが並び、消費者が購入していたことになります。この合同会社リュウセイによる「熊本産」の表記は、食品表示法第4条第1項の規定に基づいて制定された以下の食品表示基準第18条第1項(原産地表示方法)に違反することになります。
食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)(抜粋)
(横断的義務表示)
第十八条原産地
次に定めるところにより表示する。ただし、玄米及び精米にあっては、第十九条に定めるところによる。
一~二 〔略〕
三 水産物
イ 国産品にあっては水域名又は地域名(主たる養殖場が属する都道府県名をいう。)を、輸入品にあっては原産国名を表示する。ただし、水域名の表示が困難な場合にあっては、水揚げした港名又は水揚げした港が属する都道府県名をもって水域名の表示に代えることができる。
ロ イの規定にかかわらず、国産品にあっては水域名に水揚げした港名又は水揚げした港が属する都道府県名を、輸入品にあっては原産国名に水域名を併記することができる。
農林水産省から合同会社リュウセイへの指示内容
農林水産省から合同会社リュウセイへの指示内容としては、まずはアサリをはじめとする販売商品の表示点検の実施、点検の結果、不適正な表示の商品は適正な表示に改めてから販売することが指示されています。また、不適正表示の原因は食品表示に対する法令遵守の意識が欠けていたことから、今後法令遵守を徹底し、不適正表示の原因を突き止め、再発防止策の実施を実施すること、すべての役員および従業員による食品表示制度の遵守することが求められ、講じた措置を農林水産大臣宛に2022年4月11日までに提出することとされました。
コメント
農林水産省は、今回のアサリ産地偽装問題の発覚後の今月、全国の小売店を対象に改めて調査を行っています。その結果、前回調査で80%弱を占めた熊本県産、5%を占めた有明海産の販売は、共に一切確認できず、逆に前回調査では確認できなかった中国産が約75%を占めていたとのことです。これまで「熊本県産」と偽装されていたアサリの表示が、本来の原産地に切り替わったことが原因とみられています。
「国産のほうが安全である」という消費者のイメージもあり、利益追求を目的として産地偽装を行う業者は後を絶ちません。また、近年の保管技術の進歩により、遠く外国から輸入した食材であっても、見た目も味もそれほど損なうことなく消費者に提供できるようになっており、そのことが、消費者による産地偽装の見極めを難しくしています。
これに対し、電気メスと質量分析装置を活用し、食品の産地を分析するテクノロジーが登場しています。電気メスで分析したい食品に触れると、触れた部分の含有成分が質量分析装置に送られ、瞬時に分析される仕組みです。産地偽装問題の解決には、農林水産省関係機関による小売店巡回検査の強化と共に、こうしたテクノロジーの市場導入の推進が重要になりそうです。
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