レオパレス21、引越し会社より債務不存在確認訴訟を提起されたと公表
2022/06/08 債権回収・与信管理, 民法・商法
はじめに
株式会社レオパレス21は、2022年5月31日、天草運送株式会社より5月9日付けで債務不存在確認訴訟を提起されたことを文書で公表しました。レオパレス21は、1989年4月1日に、天草運送株式会社との間で2億5,000万円の金銭消費貸借契約を締結したと主張していますが、原告天草運送は当該貸付金は架空であるとして、債務の不存在の確認と、レオパレス21が別途相殺を主張する買掛金支払い債務の履行を請求しています。本記事では、経緯や用語の確認をしながら、訴訟の詳細を見ていきましょう。
【天草運送株式会社】
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訴訟の背景
レオパレス21の主張する事実は以下になります。
(1)天草運送と金銭消費貸借契約を締結
1989年4月1日、レオパレス21と天草運送との間で、2億5,000万円の金銭消費貸借契約を締結。その後、数度にわたり、両社間で期限延長の変更合意を行ったとのことです。
(2)債務承認書で天草運送の債務額を確認
2012年2月10日付債務承認書にて、天草運送がレオパレス21に対して、借入金1億1,917万4,865円と2012年1月1日以降支払いを終えるまでに発生した年14.6%の遅延損害金分の債務を負っていることの確認を行ったとしています。
(3)天草運送がレオパレス21に対して有する売掛金債権の差押
天草運送はレオパレス物件の居住者の引っ越し業務をレオパレス21より受託しており、それに基づき、天草運送はレオパレス21に対して、一定額の売掛金債権を有していたとされています。その後、天草運送は別件にて国税局から当該売掛金債権の差押を受けました。
レオパレスは、国税局からの差押に対し、2012年2月・3月分の相手方に対する買掛債務4,850万3,922円と先述の貸付金を対当額で相殺しています。
(4)天草運送からの訴訟の提起
この相殺に対して、天草運送は、1989年4月1日に行われた貸付が架空のものであったとして、「レオパレスに対して提出した債務承認書に基づいた債務は実在せず、レオパレスの相殺は無効である」として、東京地方裁判所への提訴に踏み切りました。
今回の訴訟で、天草運送は、①2012年2月10日付債務承認書に基づく1億1,917万4865円及びこれに対する年14.6%の遅延損害金支払債務の不存在、②レオパレス21が相殺を主張している4,850万3,922円の買掛債務及びこれに対する年6%の遅延損害金支払債務の履行を求めています。
債務承認弁済とは
「債務の承認」とは、文字通り相手への債務を承認することを指します。会社間で商品などの売買をして発生した売掛代金債権は、一般的な債権と同様に民法上の原則として債権者の権利行使が知った時から5年で消滅時効を迎えてしまいます(改正民法166条1項1号)。この時効を回避するためには、時効の更新を行う必要があり、裁判における請求や強制執行に代わる手段として、債務の承認を行うことで回避可能です。このように、債務承認書は、消滅時効の中断事由(民法147条)に該当するために時効を中断する目的で作成されることが一般的です。債務承認書は、債務の存在を承認するために記載されているだけであり、弁済を確約する内容は記載されていない文書です。そのため、債務承認弁済契約書とは異なります。
コメント
レオパレス21では、2018年4月に、一部施工物件において、界壁の小屋裏・天井裏部分について施工不備が発見され、話題となりました。レオパレス21は直ちに、界壁の補修に取り掛かったようですが、界壁の補修工事を行っている期間、入居者は一時退去を余儀なくされ、工事終了後に再入居とります。それらの引越し作業につき、レオパレス21から天草運送に委託されたと言われています。
レオパレスは、今回の訴訟について、「外部弁護士による調査のもと、相手方に対する貸付金は実体があるものとの調査結果が出ているため、天草運送の請求は根拠のないものと認識している」旨コメントしています。また、今後の見通しとしては、「事実関係の認識に相違があると考えており、内容を精査の上、適切に対処してまいります。今後開示すべき事項が発生した場合は速やかにお知らせいたします」とコメントしています。なお、今回の件でレオパレスは当初2022年3月決算を5月20日へ延期する方針でしたが、3月期決算に影響を与えるものではないとの結論に至ったことから、5月16日に決算を公表しています。
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