100%メロン味でキリンビバレッジに措置命令、優良誤認の違反例
2022/09/09 コンプライアンス, 広告法務, 景品表示法
はじめに
実際とは異なりジュースの原材料の大部分がメロン果汁であるかのような表示をしていたとして消費者庁は6日、キリンビバレッジ株式会社に措置命令を出していたことがわかりました。100%メロンテイストなどと表示されていたとのことです。今回は景表法の優良誤認の違反事例を見ていきます。
事案の概要
消費者庁の発表などによりますと、キリンビバレッジは2020年6月から22年4月にかけて「トロピカーナ100%まるごと果実感メロンテイスト」を販売していたとされます。同製品の容器には「厳選マスクメロン」「100%MELOM TASTE」「900ml まるごと果実感 濃縮還元 メロンテイスト果汁100%」と記載され全面にメロンの絵が表示されていたとのことです。しかし実際にはメロン果汁は全体の2%しか用いられておらず、その他はぶどう、りんご、バナナ果汁であったとされます。消費者庁は景表法の優良誤認表示に該当するとして措置命令を出しております。
優良誤認表示
景表法5条1号によりますと、(1)商品、サービスの内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示す表示、(2)商品、サービスの内容について、一般消費者に対し、事実に相違して競争事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示は不当表示の一種である優良誤認表示として禁止されております。違反した場合、内閣総理大臣(消費者庁長官に委任)は行為の差し止め、再発防止その他必要な措置を命じることができます(7条)。また消費者庁長官は措置命令に関して、優良誤認に該当するかを判断するために必要がある場合、期間を定めて事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます(7条2項)。これに対し事業者が資料を提出しない場合、または提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものでなかった場合は不当表示とみなされることとなります。
優良誤認の要件
消費者庁のガイドラインによりますと、本規定は一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を規制することを目的としていることから、「著しく優良であると示す」表示に該当するかは、業界の慣行や表示を行う事業者の認識により判断するのではなく、表示の受け手である一般消費者を基準に判断さえるとされます。そして「優良」とは科学的・客観的にみて表示されたものよりも実際のものが上回っているかではなく、一般消費者にとって実際のものと異なる表示によって「優良」と認識され誘引されるかで判断されるとされております。つまり業界人なら誤認しないものであっても、一般消費者から見れば実際より優良と誤認する表示であるかで判断されるということです。
違反事例
これまで実際に措置命令が出された例として次のような事例が挙げられます。焼き菓子の包装紙に「あきたこまち米使用純米クッキー」「コシヒカリ純米クッキー」などと表示し、あたかも主原料がこれらの米であるかのように表示されていたところ、実際には主原料は小麦粉であり、これら米の粉末は極めて微量しか使用されていなかったというものです(平成22年10月13日)。また食用塩の商品ラベルやウェブサイトで「最初から最後まで塩田で天日の力を使い結晶化させた完全天日塩です。」などと表示し、あたかも天日塩であるかのように表示されていたところ、実際には天日蒸発による海塩を洗浄したあと釜で乾燥させたものであった例も挙げられます(平成23年6月14日)。さらに「自然芋そば」「深山に自生する山芋は粘り強くて器量良し」等と記載していたにもかかわらず、実際には自然薯粉末が0.019%しか使用されていなかった例もあります(平成23年9月9日)。
コメント
本件でキリンビバレッジが販売していた「トロピカーナ100%まるごと果実感メロンテイスト」では、パッケージのすべての面で大きくメロンの絵が印刷されており、実際にはメロン果汁が2%しか含有していなかったにもかかわらず「100%MELON
TASTE」「メロンテイスト果汁100%」と表示されておりました。飲料業界の慣行からはメロン果汁100%とは誤認しえないものであっても一般消費者から見た場合、メロン果汁100%ジュースのように認識するものと考えられます。以上のように景表法の優良誤認表示は、あくまでも一般消費者から見て実際よりも著しく優良だと誤認するかで判断されます。ガイドラインの考え方を踏まえ、今一度自社製品のパッケージやWEBサイトの表示を確認しておくことが重要と言えるでしょう。
【関連リンク】キリンビバレッジ株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
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