アップドラフトに課徴金納付命令、不実証広告規制について
2022/09/28 広告法務, 景品表示法
はじめに
消費者庁は14日、「アップドラフト」(仙台市)が製造販売するイオン発生装置に関し、根拠に乏しい情報をカタログなどに掲載していたとして2800万円余りの課徴金納付命令を出したと発表しました。裏付けとなる根拠を示せなかったとのことです。今回は景表法の不実証広告規制について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、アップドラフト社は令和元年5月1日から同年12月11日にかけて、「滝風イオンメディック」と称するイオン発生装置につき、カタログやブログでインフルエンザウイルスやアレルギー物質を分解除去する効果や、免疫力を高め血圧を下げる効果などをうたい、1台24万円で販売していたとされます。消費者庁は同社に対し、期間を定めて当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、根拠に足る資料の提出はなされなかったとのことです。なお同社は同製品の表示につき「商品の体感、効果には個人差がございます。」と表示していたとされます。
優良誤認表示と不実証広告規制
景表法5条1号では、商品または役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する表示を禁止しております。これまでも何度も取り上げてきたいわゆる優良誤認表示です。そして優良誤認表示を効果的に規制するために、消費者庁長官は優良誤認に該当するかの判断にあたって、期間を定めて事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができます。これに対し事業者が求められた資料を期間内に提出しない場合や、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものではない場合、措置命令との関係では不当表示とみなされ(7条2項)、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定されることとなります(8条3項)。
不実証広告ガイドライン
消費者庁のガイドラインによりますと、提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められるためには、(1)提出された資料が客観的に実証された内容のものであること、(2)表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること、の2要件を満たす必要があるとされます。具体的には、当該分野の学術界または産業界で一般的に認められた方法または専門家多数が認める方法により実施された試験・調査によるものであること。または専門家等による見解または学術文献を表示の裏付けとなる根拠として提出する場合は、専門家等が客観的に評価した見解または学術文献であって、当該専門分野において一般的に認められているものである必要があるとされております。
規制対象例
過去実際に措置命令が出されてきたものであり、消費者庁によって資料提出が求められる表示例として次のようなものが挙げられます。まず「○○を使用すると2ミリから3ミリ、3ミリから6ミリ…というように短い期間ですくする身長が伸びる」とうたった長身機。「医学的な原理にもとづいて鼻の大部分を形成している軟骨と筋肉を根本的に矯正するように完成されたもので、隆鼻した、鼻筋が通ってきたなどの沢山の報告がある」とする隆鼻器。「何をしても無理だったという…そんな彼女も○○で10kg減量に成功」という痩身美容サービス。「3週間後には顔中にあったニキビが全部ムキ取れて消滅し、今ではすっきりすべすべ肌!」とうたうニキビ除去の化粧品などが挙げられております。いずれも合理的な根拠は示されなかったとされます。
コメント
本件でアップドラフトは、マイナスイオンの発生により、インフルエンザ、黄色ブドウ球菌、腸炎ビブリオ菌等を分解し、また白血球が大きくなって免疫力が高くなり、血圧を下げ、糖尿病を改善し、慢性肝炎も改善すると表示をして、イオン発生機を販売していたとされます。しかし消費者庁の求める合理的な根拠を示す資料は提出されず、措置命令および課徴金納付命令が出されることとなりました。なお「体感、効果には個人差がございます」との表示も一般消費者の表示から受ける認識を打ち消すものではないとしております。以上のように合理的な根拠を示すことができない宣伝文句を表示して販売した場合は優良誤認、不実証広告として規制されます。通常広告はある程度の誇張は許容されると言われますが、近年その範囲を逸脱した広告がネット上で溢れているとされます。今一度自社の広告を見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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