家庭教師大手「バンザン」に措置命令、NO.1表示のリスクについて
2023/01/16 広告法務, 景品表示法
はじめに
「利用者満足度第1位」などとうたった広告には根拠がないとして、消費者庁が家庭教師大手「バンザン」に再発防止などを命じていたことがわかりました。満足度調査は実際に利用していなくても回答が可能であったとのことです。今回はNO.1表示のリスクについて見ていきます。
事案の概要
消費者庁の発表などによりますと、「メガスタ高校生」「メガスタ医学部」「メガスタ中学生」といったオンライン個別学習指導を運営する家庭教師大手「バンザン」は、昨年4月から5月にかけて、同社ウェブサイト上で「オンライン家庭教師で利用者満足度NO.1に選ばれました!」「第1位オンライン家庭教師 利用者満足度」などと表示していたとされます。しかし同社が委託した事業者による調査は、実際に同社のオンライン個別学習指導を利用したことがあるかを確認することなく実施したもので、実際に利用した者の満足度を客観的に調査したものではなかったとのことです。消費者庁は景表法が禁止する優良誤認表示に当たるとして再発防止や周知徹底などを命じる措置命令を出しました。
優良誤認表示とは
優良誤認表示とは、事業者が自己の供給する商品・役務に関し、その品質、規格その他の内容について一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害する行為を言うとされます(景表法5条1号)。商品やサービスの品質を実際より優れていると偽って宣伝したり、競争事業者のものよりも特に優れているわけではないのにあたかも優れているかのように宣伝する行為が該当します。具体例としては、走行距離が実際には10万kmの中古自動車を3万kmと表示したり、医療保険で入院1日目から入院給付金が受け取れるように表示したにもかかわらず、実際には入院後に診断が確定しないと受け取れない場合などが挙げられます。
NO.1表示の問題点
公取委の「NO.1表示についての基本的考え方」によりますと、NO.1表示は一般消費者が商品等を選択するに際して、その選択に要する時間の短縮、情報収集コストの削減等の効果があり、一般的には消費者にとって有益な情報とされます。特に一般消費者が初めて購入したり、頻繁には購入しない商品、または実際に利用した後でないと良さがわからない場合はこのような売上実績NO.1などといった表示を重視する傾向にあるとされます。そのためこれらのNO.1表示が合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合は、実際のものより著しく優良であると誤認される危険性が高いとされます。つまり実際には売上NO.1ではない、または客観的・合理的な根拠がないにもかかわらずNO.1表示をすることは優良誤認表示に該当するリスクが非常に高いと言えます。
適正なNO.1表示のための要件
それではどのような場合にNO.1表示が適法となるのでしょうか。公取委のガイドラインによりますと、(1)NO.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること、(2)調査結果を正確かつ適正に引用していることの両方を満たす必要があるとされます。客観的な調査とは学術界または産業界で一般的に認められた方法または専門家多数が認める方法によって実施されていること、社会通念上、経験則上妥当と認められる方法で実施されていることが必要です。たとえば「顧客満足度NO.1」との表示の場合、その調査対象者が自社の社員や関係者である場合、または調査対象者を自社に有利になるように選定するなど無作為に抽出されていない場合、調査対象者数が統計的に客観性が十分確保されるほど多くない場合、自社に有利になるような調査項目を設定するなど調査方法の公平性を欠く場合などは違法となる可能性が高いとされます。
コメント
本件でバンザンから委託された事業者による調査は実際に利用したかどうかは関係なく、誰でも回答が可能であったとされ、また調査内容も複数の家庭教師業者サイトを掲載して、どの会社のサイトが満足度が高いと思うかといった漠然としたものだったとされます。客観的で合理的な調査に基づいたNO.1表示ではなかったと判断されたものと言えます。公取委の実態調査では、NO.1表示が多い業種として学習塾、住宅関連リフォーム、住宅建築、携帯電話、パチンコホール、車検、エステティック、不動産仲介、プロバイダーサービス、保険、フィットネスクラブなどが挙げられております。その内容としても売上実績、顧客満足度が最も多くなっております。このようなNO.1表示は顧客を誘引する手段としては非常に効果的である一方、優良誤認表示のリスクも同様に高いと言えます。これらを踏まえ、今一度自社の広告表示を見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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