不動産仲介大手の元社員、数千万円のリベート受領で懲戒解雇
2023/02/17 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般
はじめに
報道などによりますと、大手不動産仲介会社の三井不動産リアルティ株式会社は、株式会社ビルドと代表取締役による法人税脱税事件に関し、同社の社員がビルド側から数千万円の現金を受け取っていたとして、社内規則違反により当該社員を懲戒解雇しました。
懲戒解雇となった社員は、ビルド側から個人的にリベートを受け取り、その税務申告を行っていなかったことから、国税当局から所得税の申告漏れを指摘されていたといいます。
事案の概要
事の発端は、ビルドと同社代表取締役が法人税脱税容疑で東京国税局から刑事告発を受けたことです。
報道などによりますと、ビルドは、取引先に虚偽の領収書の作成を依頼したうえで、架空の仕入れ高を計上して所得を圧縮していた疑いが持たれています。隠した所得は、2021年9月期までの2事業年度で約1億9千万円に及ぶとされ、それにより、法人税およそ4800万円を脱税したと言われています。
その後、国税局の調査で、ビルドの代表取締役が脱税で得た資金のうち数千万円を同社の取引先だった三井不動産リアルティの社員に提供していたことが判明。当該社員が、受け取った資金に関し税務申告を行っていなかったことから、過少申告加算税などが課されたといいます。
三井不動産リアルティは、懲戒解雇の詳しい理由を明らかにしていませんが、今回の懲戒解雇に関し、「誠に遺憾で、再発防止の徹底に向け社内のコンプライアンスを強化していく」とコメントしています。
リベートの法的問題
リベートとは、「取引先から支払われる謝礼金」を指します。主に、売手から買手に対し、支払額の一部の返金や売上の割り戻しという形で支払われます。
リベートの支払いは、日本においては商慣習の一つとなっており、企業間で正式に契約書を交わし、適正に会計上の処理を行う限り、違法ではありません。
しかし、社員が会社に隠れて個人として金銭の提供を受ける場合には、詐欺罪や業務上横領罪、背任罪に問われる可能性があります。
社員がリベートを受け取った場合の対応
では、自社の社員がリベートを受け取っていることがわかった場合、企業側はどのような対応がとれるのでしょうか。以下の対応が考えられます。
(1)会社の損失の補填
社員のリベート受け取りにより会社に損失が発生している場合、まずは、その損失の補填を考えることになります。具体的には、社員の行為と因果関係のある損害額を算定のうえ、損害賠償請求を行います。金額が高額に及び、一括での支払いが難しい場合には、公正証書を作り、分割支払いの合意を行うやり方もあります。
(2)懲戒解雇
人事上の措置としては、今回、三井不動産リアルティが行ったような懲戒解雇があります。しかし、一方的な懲戒解雇は後日の労務紛争の火種となるため、社内規程に基づき適正な手続きを踏むことが重要です。
(3)刑事告訴
上述のように、違法なリベート受け取りは、詐欺罪(10年以下の懲役)や業務上横領罪(10年以下の懲役)、背任罪(5年以下の懲役又は50万円以下の罰金)を構成する可能性があります。会社が被った損害の程度、リベート受け取り行為の悪質性などに照らしながら、刑事告訴の有無を検討することになります。
なお、受け取ったリベート額が大きい場合には、初犯でも実刑判決が出るケースがあります。その点も加味した検討が必要です。
コメント
社員による違法なリベートの受け取りは、自社または取引先企業が受ける税務調査を契機に発覚することが多いとされています。今回は数千万円単位でのリベートの受領が行われましたが、「数万円単位での小さな金額であれば、誰にも迷惑をかけないのでは?」と考え、魔が差す社員も出て来る可能性があります。個人としてのリベートの受け取りが、刑事犯罪になる可能性があることを今一度、社内周知する必要がありそうです。
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