公取委が「関家具」に立入検査、再販売価格の拘束とは
2023/09/28 行政対応, 独禁法対応, 独占禁止法
はじめに
福岡県の家具卸大手「関家具」(大川市)に公正取引委員会が26日、独禁法違反の疑いで立ち入り検査に入っていたことがわかりました。オフィスチェアの販売価格を拘束した疑いがあるとのことです。今回は独禁法の再販売価格の拘束について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、関家具は遅くとも2020年頃から、国内の総代理店となっている台湾メーカーのオフィスチェアなどについて、小売業者に対し同社が希望する価格で販売するよう強制した疑いがあるとされます。従わない場合には出荷価格の引き上げや取引の見合わせを示唆していたとのことです。安売りさせず、小売価格を維持することでブランド力の低下を食い止めることが目的であったとみられております。同社は事実を真摯に受け止めて調査に全面的に協力するとしております。
再販売価格の拘束とは
独禁法2条9項4号イロによりますと、正当な理由がないのに相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束することが不公正な取引方法として禁止されております(19条)。相手方からさらに購入する業者との販売価格について拘束する場合も同様です。メーカーが卸売業者に対し自己の販売する製品について販売価格を指示してその価格で販売させる場合、さらに卸売業者から当該製品を購入する小売業者への価格を拘束する場合が典型例と言えます。複数のメーカーが共同して行った場合は不当な取引制限に該当する場合もあるとされております。
再販売価格の拘束の要件
再販売価格の拘束の要件として、まず販売業者の自由な価格決定を拘束することが必要です。ここで「拘束」とは必ずしもその取引条件に従うことが契約上の義務として定められているこを要せず、従わない場合に経済上なんらかの不利益を伴うことにより実効性が確保されていれば足りるとされます(最判昭和50年7月10日)。またメーカーが「メーカー希望小売価格」や「標準小売価格」を設定するだけで、販売業者が実売価格を自由に決定できるのであれば拘束には当たらないとされております。価格が守られているか店頭で巡回したり、秘密番号によって流通ルートの探索等を行う場合は拘束に当たるとされます(審決平成3年8月5日)。そして再販売価格の拘束での公正競争阻害性は自由な競争の減殺とされております。
正当な理由
独禁法2条9項4号では「正当な理由がないのに」と規定されており、正当な理由があれば再販売価格を拘束しても違法ではないように見えます。「正当な理由」とは、「もっぱら公正な競争秩序維持の見地からみた観念であって、当該拘束条件が相手方の事業活動における自由な競争を阻害するおそれがないことを言う」とされます(最判昭和50年7月11日)。事業経営上必要、あるいは合理的であるというだけでは該当しないとされます。またブランド間競争が促進され、市場全体で見れば競争が促進するとの理由だけでは該当しないとされます。なおこの正当な理由について公取委のガイドラインでは(1)ブランド間競争を促進、(2)商品の需要が増大し消費者の利益を増進、(3)その効果はより競争阻害的でない他の手段では得られず、(4)必要な範囲および必要な期間に限って行われた場合に認められるとしております。
コメント
本件で関家具はオフィスチェアを小売店に卸す際、希望する価格で販売するよう強制し、従わない場合には出荷価格の引き上げや取引の見合わせを示唆していた疑いがもたれております。これらが事実であった場合、取引の相手方に経済上の不利益を伴わせて実効性を確保していると言え、再販売価格の拘束に該当する可能性が高いと考えられます。以上のように相手方に何らかの経済上の不利益を課すことにより販売価格の決定を拘束した場合は不公正な取引方法に該当することとなります。ブランド価値の維持や値崩れを防ぐために価格の拘束や、それに従わない業者に販売しないといった例がこれまでも見られております。自社の取引先に価格を指示していないか、また従わない場合に不利益を課していないかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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