公取委、アプリ搭載をめぐる独占禁止法違反疑いでGoogleを調査
2023/10/25 行政対応, 独禁法対応, 独占禁止法, IT
はじめに
公正取引委員会は、10月23日、スマートフォンメーカー(以下、「メーカー」)に対する独占禁止法違反の疑いで米グーグル社および関連企業2社の調査を開始したと発表しました。出荷時のスマートフォンに、グーグルの検索アプリ等の搭載を求めたほか、端末画面上でのアプリの配置まで指定していた疑い等が持たれています。
欧米では、グーグルの検索サービスをめぐり、既に調査や訴訟が始まっていますが、国内でグーグルに対する独禁法違反被疑事件の調査が公になるのは初めてとされています。
自社アプリ優先的に搭載か
公正取引委員会は、以下の被疑事実で調査を進めているとしています。
(1)メーカー製造のAndroid端末への「Google Play(アプリストア)」などの搭載を許諾する際、検索アプリ「Google Search」やブラウザアプリ「Google Chrome」といった自社アプリを搭載させ、これらのアプリのアイコンなどの端末画面上の配置場所を指定する内容の許諾契約を締結したこと
(2)端末に競合他社の検索アプリを搭載しないことなどを条件に、検索連動型広告サービスから得た収益を分配する内容の契約をメーカーらとの間で締結したこと
これらの行為により、競合となる事業者の事業活動の排除および取引先事業者の事業活動の制限を行った疑いがあるといいます。
公正取引委員会は、既に審査を開始しており、第三者からの情報や意見を受け付けるとしています。
総務省が発表した「令和4年版 情報通信白書」によりますと、検索エンジンの世界市場におけるGoogleのシェア率は85%以上。しかし、近年、低下傾向にあり、他社のシェアが拡大しているということです。また、日本においては、パソコン・スマートフォンともにGoogleが75%超のシェアを占める一方で、スマートフォンではYahoo!が24%程のシェアを占めている状況です。
グーグルに対する米国での訴訟
グーグルのサービスをめぐっては、アメリカでも規制の動きがあります。アメリカ司法省と11州は、10月20日、グーグルがインターネット検索市場やオンライン広告の独占を維持するために反トラスト法(日本における独占禁止法)に違反したとして連邦地裁に提訴しています。
司法省は、グーグルがiPhoneなどを製造する企業「Apple」などの端末メーカーらに毎年数100億ドル(日本円にして1.5兆円)を支払い、検索エンジンがブラウザや携帯電話などに初期搭載されるように仕向け、プライバシーとデータ保護の観点や技術革新の妨害により市民に損害を与えていると主張しています。
また、ネット広告市場における競争をめぐっても今年1月にグーグルは提訴されており、そこでは、「反競争的な買収を通じて、ネット広告市場の競争を妨害している」などと主張されています。
今回の訴訟は、アメリカ規制当局が大手企業に対する訴訟としては、1990年代のマイクロソフト以来となる大型訴訟だということです。
なお、マイクロソフトの訴訟ではパソコンソフト「ウィンドウズ」が誇った高いシェアを利用し、インターネット閲覧ソフトを抱き合わせ販売していたなどと指摘されていました。この訴訟は、当局とマイクロソフトの和解で終了しています。
コメント
グーグルは、ヨーロッパでも、ネット広告で公正な競争を妨げたとして日本円で1800億円余りの制裁金を支払うよう命じられたほか、2022年にはEUで「デジタル市場法(DMA)」が発効するなど、巨大IT企業が自社サービスを優遇させるなどの行為を規制する動きが強化されています。
こうした欧米での動きに対し、日本での規制や調査の動きが遅いといった声もあがっていました。公正取引委員会が今後、どのように調査を進めていくのか、また巨大IT企業への規制の動きがどのように変化していくのか。要注目です。
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