英アパレル「スーパードライ」、マンチェスター・シティーを商標権侵害で提訴
2024/01/16 海外法務, 知財・ライセンス, 商標法
はじめに
イギリスで人気のアパレルブランド「Superdry」が、有名サッカークラブ、マンチェスター・シティーを提訴しました。
チームのトレーニングウェアに日本のアサヒビールの「スーパードライ」のロゴが掲示されており、そのロゴが同社の商標権を侵害していると主張しています。
スーパードライがサッカークラブを提訴
日本で“スーパードライ”と聞けば、ビールを思い浮かべる人がほとんどだと思いますが、「Superdry」というアパレルブランドがイギリスにあることをご存知でしょうか。
2001年に設立されたイギリスのアパレルブランド「Superdry(以下、「Superdry社」)」は、現在、47の国や地域で事業を展開している人気ブランドで、主にTシャツやスウェットなどを販売しています。胸もとなどに“Superdry 極度乾燥(しなさい)”という奇妙な日本語が並記されたロゴデザインが入っていることで知られていますが、これは、日本在住経験のあるイギリス人のジュリアン・ダンカートンがアサヒビールの“SuperDry”からインスピレーションを得て名づけたとされています(英語本来の使い方を離れた英語表現がキャッチフレーズとして使用されていることを面白く感じたそうです)。
報道などによりますと、そのSuperdry社は先月、イングランドのサッカーリーグ・プレミアリーグのマンチェスター・シティFCを相手取り提訴したということです。
マンチェスター・シティは、2022年からアサヒビールとパートナーシップ契約を締結しており、同社の製品であるノンアルコールビール「Super “Dry“ 0.0」のロゴをトレーニングウェアに大々的に掲示していました。
このトレーニングウェアについて、Superdry社は、自社のロゴとアサヒビールのロゴは、わずかな違いしかなく、一般消費者が混同するおそれがあると主張。洋服類などの区分における商標権の侵害を主張し、マンチェスター・シティに対し、アサヒビールのロゴの使用中止および金銭的補償などを求めています。
なお、日本国内では、アサヒグループホールディングス株式会社が、「Superdry社の洋服類・Tシャツが同社の商標権(商標登録第5578951号)を侵害している」として、平成28年から輸入差止申立を行っています。
世界的に冒認出願が問題視されている
商標権は登録された国ごとに認められる属地的な権利です。そのため、事業を展開する国ごとに登録する必要があります。
商標権をはじめとする知的財産権をめぐっては、出願する正当な権限を有しない人・企業などが出願を行う「冒認出願」が世界的に大きな問題となっています。
出願審査を担当する審査官にとって、出願人が正当な権利を有する者か否かの判断は非常に困難です。そのため、冒認出願により、正当な権利を有しない者が権利を取得してしまうケースも少なくありません。
日本企業においても、日本でのみ商標登録されている製品が狙われ、海外で冒認出願され権利化するケースがあるため、要注意です。
例えば、模倣品を作った者が冒認出願し、先に商標登録されてしまうと、オリジナル製品を作った者でも、商標を使用できなくなる可能性があります。
実際、インドネシアでは、日本の居酒屋の名前が第三者に商標登録されてしまい、日本企業側が敗訴した事例も確認されています。
冒認出願による商標の権利化を許した場合、商標を利用できないことでマーケティング面で不利になるのはもちろんのこと、模倣品が製品事故を起こした際などに、道連れ的に正規品の信頼も一緒に失われるおそれがあります。
こうした冒認出願を防ぐためには、早期に、必要な国全てにおいて商標出願する必要があります。ちなみに、商標登録を検討すべき国の基準として、以下が挙げられます。
①商品・サービス展開をする国
②製造・流通過程で商品が通過する国
③本社・地域本社などの機能がある国
コメント
海外での冒認商標があった場合、その国の法律に則り、無効確認や取消請求などの手続をとることになります。
国ごとに商標権侵害と認定される根拠は異なりますが、一般的には、以下の3点が大きく考慮されるといわれています。
・よく知られた名称か否か
・不正な目的や意図の存在
・登録後、商標が使用されている実態があるか
今回の問題に関し、「既に、イギリス国内でビールのアサヒスーパードライはよく知られている」との声もあり、今後、裁判所がどのような判断を下すのか注目が集まります。
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