投函用のチラシ900kgを海に捨てたアルバイト男性を逮捕/廃棄物処理法について
2024/02/07 コンプライアンス, 行政法
はじめに
チラシ投函のアルバイトをしていた男が、約900kg分のチラシを海にそのまま捨てていたとして、廃棄物処理法違反の疑いで海上保安部に逮捕されました。
900kg分のチラシを投棄か
報道などによりますと、逮捕されたのは、北九州市のポスティング作業のアルバイト男性(74歳)です。昨年10月までの約2年半の間、指示されたチラシのポスティングを行うことなく、小倉北区の海に不法投棄していたとされています。
男性は陸からチラシを捨てていたとみられており、海からは1組1000枚で結束されたチラシの束が177束発見され、その総量は合計900kg分にも及んだということです。
昨年4月に「海の中に大量のチラシが捨てられている」という情報提供があり、捜査の結果、海底に沈むチラシが発見され、事件が発覚したといいます。
門司海上保安部は、捜査への支障を理由に容疑者の認否を明らかにしていませんが、今後も余罪を調べる方針です。
廃棄物処理法はどんな法律?
今回の事件は、従業員が個人として不法投棄を行ったケースですが、仮に会社が組織的に不法投棄を行った場合、会社が廃棄物処理法違反に問われることになります。
廃棄物処理法は、高度経済成長期の大量消費・大量廃棄が大きな社会問題となった際、ごみや公害問題を解決するために制定されました。その後も時代の変遷に合わせ何度か改正されています。
この法律の中で、廃棄物は「占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となった物」と定義され、さらにいくつかの種類に区分けがされています。
・産業廃棄物:事業活動で発生したもののうち、法令で定める20種類
・特別管理産業廃棄物:産業廃棄物のうち、特に指定された有害なもの
・一般廃棄物:産業廃棄物以外のもの
・事業系一般廃棄物:事業活動で発生した、産業廃棄物以外のもの
・家庭廃棄物:一般家庭の日常生活から発生したもの
・特別管理一般廃棄物:一般廃棄物のうち、特に指定された有害なもの
廃棄物処理法第16条では、「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と定められており、運搬など処理が不適切な場合に廃棄物処理法違反となります。
もし違反すれば、個人においては、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方。法人においては、3億円以下の罰金が科されます。
また、現在は未遂の場合でも、既遂の場合と同じ罰則が設けられています。
未遂でも同じ罰則が科される理由としては、一旦不法に廃棄が行われてしまうと原状回復に多大な困難を伴う場合が多いためです。
また、不法投棄の刑事上の時効は5年ですが、この5年が経過していても行政処分の対象となります。
産業廃棄物処理委託契約書の締結は義務
企業活動で生じた産業廃棄物は、排出した事業者が最後まで適切に処理する責任がありますが、廃棄物の種類や量によっては廃棄物処理業者へ委託するケースも少なくありません。その際、処理業者との間で産業廃棄物処理委託契約書を締結することになりますが、以下の点に注意する必要があります。
①処理業者が都道府県・政令市に許可を得た業者かどうか。
②処理業者が許可を得ている事業範囲内の産業廃棄物の処理を委託しているか。
※もし事業範囲を超えて依頼した場合に無許可委託となるおそれがあります。
また、処理にあたり、収集運搬業者・中間処理業者・最終処分業者など、工程ごとに別々の企業に委託する場合には、それぞれ個別に契約書を締結するのが適切とされています。
なお、産業廃棄物処理委託契約書の締結をしなかった又は委託基準に違反した場合、排出事業者に対して、300万円以下の罰金もしくは3年以下の懲役、またはその両方が科されるため要注意です。
コメント
投函されたと思っていたチラシが大量に不法投棄されていたとあり、男性にチラシ投函を依頼した会社は大いに困惑したと思いますが、会社側が指導・監督等に十分な注意を尽くさなかったと判断された場合、会社側も責任を追及されるおそれがあります。
今回のケースのように、期せずして従業員個人が廃棄物処理法違反となる行為を行わないよう、日ごろから管理・監督することも重要ですが、製品の製造過程で発生した廃棄物や、オフィスワークで発生した書類やゴミなどの処理を処理業者に委託する場合も注意が必要です。
処理工程がブラックボックス化されやすい廃棄物処理においては、処理業者が適切に廃棄物の処理を行っているのかが不透明なケースがあるためです。適切な契約締結と委託先の管理が大切になります。
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