ダイコクドラッグに3億円追徴課税、免税店要件について
2024/06/04 税務法務, 通商法関連業務, 税法, 小売
はじめに
化粧品などの免税販売をめぐり、ドラッグストア「ダイコクドラッグ」を展開する運営会社が大阪国税局から追徴課税を受けていたことがわかりました。免税要件を満たさなかったとのことです。今回は消費税免税店制度について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、大阪国税局の税務調査で、大阪市中央区のダイコクドラッグチェーン店「中央ダイコク」と「道頓堀ダイコク」は転売目的など免税要件を満たさない外国人客への販売が約30億円分あったとされます。これらの店舗で日本に住む中国人らが転売業者に雇われ、「買い子」として化粧品や日用品を大量に購入していたケースが多数見つかっており、コロナ禍の影響で訪日客が激減していた時期と重なるとのことです。大阪国税局は2021年8月期までの2年間分の過少申告加算税を含め消費税計約3億円を追徴課税しました。同社は「パスポートでの本人確認や在留期間の確認などが不十分だったと指摘を受けた、真摯に受け止め、適正な免税販売をする」としております。
消費税免税店とは
消費税免税店とは、「輸出物品販売場」とも言い、外国人旅行客等の非居住者に対して特定の物品を一定の方法で販売する場合に、消費税を免除して販売することのできる店舗を言います(消費税法8条1項)。日の丸に桜の花びらと「Japan.Tax-free
Shop」のロゴがシンボルマークとなっており、注意喚起文書などが貼付されたビニール袋などを持った外国人購入者を見ることができます。この消費税免税制度は外国人旅行者等が日本国内で買い物をし、それを国外に持ち出すことが想定されており、消費税が免除されております。そのため日本国内で消費したり譲渡したりすることができず、出国の際に一緒に国外に持ち出すことが厳格に求められ、違反した場合には消費税が徴収されることとなっております。
免税制度の要件
(1)場所
消費税免税販売は誰でもできるわけではなく、「免税店」の許可を受けた店舗であることが必要です。免税店の許可申請は納税地を所轄する税務署に申請することとなります。許可申請がなされた場合、税務署は申請事業者が現に国税の滞納をしていないか、販売店舗が現に外国人等の利用が見込まれる場所であるか、必要な人員や設備を整えているかなどを審査します。この人員は免税販売の際に外国人に制度の説明ができることが必要とされますが、流暢に外国語を話せることまでは要求されておりません。
(2)対象者
対象者は「非居住者」となります。この非居住者には日本国籍を有する場合とそうでない場合に分けられます。日本国籍を有する場合は、本邦入国後6ヶ月未満であり、日本国内以外の地域に引き続き2年以上住所または居所を有する者とされております。日本国籍を有さない場合も本邦入国後6ヶ月未満であることを要し、在留資格は短期滞在、外交、公用であることが必要で、それ以外の在留資格の場合は対象外となります。
(3)対象物品
免税販売の対象となる物品は、通常生活の用に供される物品とされます。非居住者が事業用または販売用として購入することが明らかな場合は対象外とされます。この通常生活の用に供される物品は一般物品と消耗品に分けられます。一般物品とは家電製品やカバン、靴、洋服、着物、時計、宝飾品、民芸品などです。この一般物品の場合は1人の非居住者に対して同じ店舗における1日の販売合計額が5000円以上とされます。消耗品は食品や果物、化粧品、医薬品、飲料等とされます。消耗品の場合は1人の非居住者に対して同じ店舗における1日の販売合計額が5000円以上、50万円以下の範囲とされます。また日本国内で消費されないように指定された方法による包装が必要です。
免税販売の手続きの流れ
免税販売ではまずパスポート等の提示を求め、非居住者であることを確認します。パスポート以外では船舶観光上陸許可証、乗員上陸許可書、緊急上陸許可書なども可能です。非居住者であってもこれらを所持していない場合は免税販売はできません。確認ができたら次に必要事項を説明します。輸出するための購入であること、出国の際に税関でパスポートの提示が必要であること、出国の際に購入物品を所持していなかったら消費税が追徴されることなどについてです。次に国税庁に購入記録情報を送信し、指定の方法で包装して精算・引き渡しを行います。購入記録は7年間保存されることとなります。購入者は出国の際にパスポートを提示し、購入した免税物品を携帯して国外に持ち出すこととなります。
コメント
本件で問題となったのは、日本に居住する中国人が転売業者に雇われ、「買い子」としてダイコクドラッグで化粧品等を大量購入したということです。免税販売の対象となるのは非居住者であり、外国人であっても日本に居住する者は対象外となります。また事業用に購入する場合も対象外です。これにより同社は約3億円の過少申告加算税と追徴課税を受けました。以上のように消費税免税店による免税販売はあくまでも国外への輸出として免税されます。しかも事業用ではなく通常生活の用に供するためと限定されます。近年この制度を悪用し、転売で利益を得るケースが横行していると指摘されており、政府はこの免税制度の見直しを検討しております。免税販売を行っている場合は、パスポート等の本人確認や説明などが適切にできているか、今一度確認し直しておくことが重要と言えるでしょう。
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