都内飲食店「トムボーイ」で赤痢菌食中毒、店に7日間の営業停止処分
2024/08/21   コンプライアンス, 危機管理, 食品衛生法, 外食, 食料品メーカー

はじめに


気温が高い日が続く中、今年も食中毒のニュースが各地で報じられました。
そのうちの一つが東京都港区の飲食店「トムボーイ赤坂店」での食中毒です。東京都は、8月16日、この店を利用した男女5人が赤痢菌による食中毒を発症したと発表しました。
都内で赤痢菌による食中毒が発生するのは、統計を開始した2000年以降初めてのことだといいます。

このほかにも、大分県の旅館でノロウイルスによると見られる食中毒の集団感染が確認されており、注意が必要です。

 

赤痢菌による食中毒発生か

有限会社トムボーイ企画が運営し、アジア・エスニック料理から本格焼肉まで多彩な料理を提供する人気店、「トムボーイ赤坂店」。症状があったのは、7月31日と8月1日に同店で食事をした3組の男女計5人(28〜34歳)です。このうち2人の便から赤痢菌が検出されたといいます。
患者のうち、1人は一時入院していましたが、現在は全員が快方に向かっているということです。

「赤痢」とは、経口感染する急性腸炎で、世界的にまん延しています。日本では戦後10万人以上の患者がいて、2万人近い患者が命を落としました。患者数は1965 年半ば頃から激減していますが、現在でも海外からの帰国者などに症状がみられることがあります。

感染経路としては、直接手指が触れる食事(いわゆる「手づかみ食べ」)のほか、乳幼児がおもちゃ等を口に含んだりすることによる物品からの感染も報告されています。
また、赤痢菌の感染力は極めて強く、少量の菌でも感染するといわれています。そのため、保育園や学校・福祉施設・宿泊施設など、人と人の接触機会の多い場所では、集団感染が発生するおそれがあるということです。

東京都などによりますと、今回の食中毒は、8月5日に港区みなと保健所へ「8月1日に港区内の飲食店を利用した3名が下痢、発熱等の症状を呈した」との連絡があったことで発覚したといいます。
また、8月9日には、「患者1人が赤痢である」として、医療機関が発生届を保健所に提出しています。この患者は、7月31日の昼に、トムボーイ赤坂店を利用していました。

東京都は、症状のあった5人に共通するのがトムボーイ赤坂店での食事だったことなどから、食中毒の原因を店で調理した食品と断定。同店を8月16日から7日間の営業停止処分としました。保健所は、赤痢菌が食品に付いた経緯を調査中です。

 

大分県の旅館では湧水による集団食中毒が発生


暑い夏は特に起こりやすい、食中毒事故。大分県の「旅館 黒嶽荘」ではノロウイルスとみられる食中毒事故が発生したと報じられました。8月3日から12日にかけて提供された食事を食べたり、湧き水を飲んだ458人が、嘔吐や発熱などの症状を発症し、そのうち2人が入院したといいます。
その後、ノロウイルスGⅡが検出されたと発表されており、湧水が汚染されていた可能性が高いとみられています。県は集団食中毒が発生したとみて、旅館に対し、8月13日から15日までの期間、営業停止命令を出しました。

 

集団食中毒には民事訴訟のリスクも


食中毒が起きた際、飲食店側に責任が認められた場合、営業停止命令等の行政処分が科されるほか、賠償金の支払いを命じられることがあります。
過去には集団食中毒が起きたことで訴訟となった事例もありました。

○生牡蠣による集団食中毒訴訟
飲食店にて生食用の牡蠣を提供した際、牡蠣が小型球形ウイルスに汚染されていたことから集団食中毒が発生。飲食店経営者が生食用牡蠣の加工販売会社および仕入販売会社に対し、損害賠償請求を求めた事案です。

訴訟では、食中毒の原因に関する事実認定、食中毒と原告が主張する損害との因果関係、加工販売会社の製造物責任・不法行為責任の有無、仕入販売会社の債務不履行責任・瑕疵担保責任の有無などが争われました。

横浜地方裁判所は判決で、生食用の牡蠣が食中毒の原因だったと認定。さらに、加工販売会社の不法行為責任、仕入販売会社の瑕疵担保責任を認め、計約480万円の損害賠償を命じました(横浜地裁平成15年12月16日判決)。

 

コメント


食品提供の際に、もっとも注意すべき食中毒事故の発生。最悪の場合、上述した行政処分や民事訴訟に留まらず、刑事責任を問われるリスクまであります。
具体的には、店側が食品衛生法違反と認められた場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されることがあります(食品衛生法71条)。
さらに、被害者が死傷等した場合には、業務上過失致死傷等の罪に問われる可能性もあります。この場合、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科されることになります(刑法第211条)。

飲食店を運営する企業のみならず、食事提供を伴うイベントを企画する企業、社内に食堂を持つ企業などでも注意が必要です。

 

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