公取委が香川県の二十数社に立入検査、土木工事で大規模な談合を繰り返したか
2024/09/12 コンプライアンス, 行政対応, 独禁法対応, 独占禁止法, 建設
はじめに
公正取引委員会が9月3日、香川県高松市に本社を置く二十数社に、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立入検査を行ったと報じられました。
香川県が発注した公共工事の入札をめぐって談合が行われた疑いがあるとされています。
二十数社に立入検査、談合か
報道などによりますと、立入検査を受けたのは、高松市内の建設会社二十数社。
「株式会社村上組」、「株式会社大下組」、「株式会社野崎組」、「金本建設株式会社」、「東讃建設株式会社」、「株式会社エフワン建設」、「株式会社河野組」などだということです。
各社は遅くとも2019年度から、香川県が発注した道路舗装などの土木工事のうち、施工費が3000万円以上の一般競争入札において、受注する業者や価格を事前に決めるなどした独占禁止法違反の疑いが持たれています。
入札にあたっては、以下のような手順で、落札予定業者が確実に受注できるように調整していたとされています。
(1)受注希望業者が入札ごとに周囲に意向を伝え、話し合いで落札業者を決定。
(2)落札予定業者が予定価格の95%の価格で入札。
※香川県では官製談合の防止で、土木工事の一般競争入札では予定価格を事前に公表
(3)他の業者は98%の価格で入札、または入札自体に不参加。
2019年度から2023年度にかけて、香川県が発注した土木工事の総額は合わせて約231億円とされていますが、その大部分で談合が行われていた疑いがあるとも報じられています。
公正取引委員会は2001年にも、香川県や高松市が発注した公共工事の入札をめぐる談合に関し、村上組などの159社に再発防止を求める排除勧告を出しており、2003年にはそのうち134社に対し、計約10億円の課徴金納付を命じています。
今回、立入検査を受けている会社の大半は、当時、公正取引委員会から勧告を受けた会社だといいます。
独占禁止法が禁じる「不当な取引制限」とは
『不当な取引制限』は、独占禁止法第3条で禁止されています。複数の事業者が共同して競争回避的な行為を行うことで、競争を実質的に制限することに繋がるためです。不当な取引制限に該当する行為には「カルテル」と「入札談合」があります。
◯カルテル
事業者又は業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来であれば各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為
◯入札談合
国や地方公共団体などの公共工事や物品の公共調達に関する入札に際し事前に受注事業者や受注金額などを決めてしまう行為
『不当な取引制限』と認められた場合、公正取引委員会から行政処分として、排除措置命令や課徴金納付命令を受けるおそれがあります。また、別途、刑事罰が科されるケースもあります。
『不当な取引制限』をめぐっては、今年3月28日にも、兵庫県内の工具製造販売会社、株式会社スターエムと大西工業株式会社に対し、課徴金納付などの命令が下されています。
2社は特定木工用ドリルの仕切価格について、遅くとも2019年9月26日までには12%を目途に引き上げると合意。その後も価格を引き上げ、遅くとも2020年10月7日までに10%を目途に引き上げる旨の合意を行ったということです。
スターエムは木工用ドリル製造販売における国内シェアが1位。両社を合わせると国内供給のほとんどを独占している状況でした。
公正取引委員会は、2023年9月5日に両社に立入検査を実施。それを踏まえ、翌2024年3月28日には、「独占禁止法が禁じる不当な取引制限に当たる」としてスターエムに8572万円、大西工業に824万円の課徴金納付命令と排除措置命令を出しています。
【参考リンク】
木工用ドリル大手 スターエムに課徴金納付命令、不当な取引制限の要件について(企業法務ナビ)
コメント
上述のように、今回、立入検査の対象となった会社の中には、約20年前にも談合を理由に行政処分を受けた会社が相当数含まれているとみられています。
仮に、再び談合が確認された場合に、公正取引委員会がどのような処分を下すのか。大きな注目を集めます。
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