“白トラック”によるリンゴ運搬容疑で逮捕/貨物自動車運送事業法について
2024/10/07 契約法務, コンプライアンス, 行政対応, 下請法, 流通, 物流
はじめに
先月26日、青森県内にて、国の許可を受けずに自分のトラックで農家などからリンゴを集め青果卸売会社まで運んだ容疑で、38歳の男が貨物自動車運送事業法違反の疑いで逮捕されました。
許可なく運送業を請け負うことは、“白ナンバートラック行為”とも呼ばれ、違法とされています。過去には約3年間で2億円にものぼる売上を作ったとして逮捕された親子もいたといいます。
許可受けずにリンゴを運搬し報酬得たか
報道などによりますと、男は2023年11月15日から24日までの期間、運輸局の許可を受けずに、自家用のトラックで複数の農家から青果会社にリンゴの木箱を4回運び、報酬を受け取った貨物自動車運送事業法違反の疑いが持たれています。
運んだ木箱の量は、1回およそ100箱、集荷代金として合わせて約5万円を受け取ったとされています。
本件は、警察が外部から指摘を受けたことがきっかけで発覚し、警察は慎重に捜査を進めていました。
男は普段から個人で運送業を営んでおり、県内の運送会社と青果会社が契約したリンゴの集荷作業を請け負っていたと報じられています。
本来、金銭を受け取って荷物を運ぶためには、運輸局から許可を受ける必要があります。しかし、男からの許可申請は確認されず、いわゆる「白ナンバー」のトラックで営業をしていたとみられます。
男は容疑を否認しているということですが、警察は余罪や共犯者の有無などについても調べを進めています。
貨物自動車運送事業法とは
「貨物自動車運送事業法」では、貨物自動車による安全な輸送を実現するべく、貨物自動車運送事業の許可要件や行為規制などを定めています。
ちなみに、貨物自動車運送事業とは、「他人の需要に応じ、有償で自動車を使用して貨物を運送する事業」を指します。有償で自動車を使用して、貨物を運送する際には、
・一般貨物自動車運送事業
・一般貨物自動車運送事業(特別積合せ)
・特定貨物自動車運送事業
・貨物軽自動車運送事業
などの許可申請を行う必要があり、許可が取得できたら、緑ナンバーに付け替える流れとなっています。
たとえば、一般貨物自動車運送事業許可の取得には、要件をクリアした営業所や休憩施設・車庫を備えていることなどに加え、定められた人数の運転者・運航管理者・整備管理者を営業所に選任・配置していなければなりません。さらに、定められた所要資金を常時確保し、事業内容によっては各種保険に加入することが求められます。
過去には白トラ行為で2億売り上げ逮捕の事例も
こうした許認可取得のハードルの高さゆえか、無許可での運送業務を請け負う、いわゆる「白ナンバートラック行為」をしてしまう人がいるということです。
今年7月には、東京都で白ナンバートラック行為をしたとして、同じく貨物自動車運送事業法違反容疑で運送会社を経営する親子が逮捕されています。
報道などによりますと、親子は1月~4月にかけて3回、許可を得ずにトラックで野菜などを有償で運送したということです。
逮捕された父親はかつて運送会社を経営していましたが、2021年に名義貸しなどの違反が発覚し、事業停止処分を受けていました。その後、新しい会社を設立しましたが、その際に許可を得ていなかったとみられています。
親子は逮捕されるまでの約3年間、白ナンバートラック行為を続けており、その売上は約2億円にのぼった可能性があると報じられています。
コメント
白ナンバーは、自家用または商用として登録されるものです。白ナンバーのトラックであっても、例えば個人や法人が自分の会社のために荷物を運送する場合には問題になりません。
しかし、運送に対する報酬を得る・報酬を請求するといった行為が認められた場合には、貨物自動車運送事業法違反となり、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方が科せられるおそれがあります。
業務委託契約の一環として、他の業務と合わせて運送業務を引き受けてしまい、違反してしまうケースもあるようですので、契約締結の際には注意が必要です。
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