メルコホールディングスがバッファローを吸収へ、「簡易合併」とは
2024/10/16   商事法務, 総会対応, 会社法, メーカー

はじめに

 メルコホールディングスは11日、完全子会社であるバッファローを吸収合併すると発表しました。これによりバッファローは解散し、メルコが事業を継承するとのことです。今回は吸収合併の一種である簡易合併について見直していきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、現在のメルコホールディングスは持株会社として2003年に設立され、株式交換を経て、音響機器メーカー「メルコ」を完全子会社とし、このときにメルコが「株式会社バッファロー」に社名変更をしたとされます。メルコホールディングスはバッファローを吸収合併し、事業も承継して商号もバッファローに変更するとのことです。効力発生日は2025年4月1日とされ、その日に現バッファローは解散することとなります。また商号変更とそれに伴う定款変更については今年12月18日に臨時株主総会を開催して承認決議を得る予定とされております。

 

組織再編とその手続き

 吸収合併や吸収分割、株式交換などのいわゆる組織再編行為に必要な手続きとしては、(1)当事会社間での交渉、(2)契約の締結、(3)書面の事前備え置き、(4)株主総会での承認決議、(5)反対株主への通知・公告、(6)債権者への公告・催告、(7)効力発生、(8)書面の備え置き、(9)登記という流れとなります。どの会社とどのような条件で合併等を行うかなどを検討し、合意に至ったら取締役会決議を経て合併契約等を締結することとなります(会社法748条等)。契約締結後は両当時会社は契約で定めた事項などを書面または電磁的記録として備え置きます(782条1項、794条1項等)。そして原則として両当事会社では株主総会での特別決議による承認を要します(309条2項12号)。これに先立って反対の意思を通知した株主は株式を公正な価格で買い取ることを請求でき、会社は効力発生日の20日前までにその旨を通知する必要があります(785条1項、797条1項)。また債権者に対しても異議を述べることができる旨、官報での公告、個別催告をする必要があります(789条2項、799条2項)。効力発生日後は遅滞なく書面の備え置きをし、(801条1項)、2週間以内に登記をします(921条)。

 

簡易合併

 上でも触れたように、吸収合併などの組織再編行為では、原則として株主総会の特別決議を要します。しかし一定の場合はこれを省略することが可能となっております。存続会社等が消滅会社等に交付する対価が存続会社等の純資産額の20%以下である場合は存続会社側での承認決議を省略できます(796条2項)。これを簡易合併と言います。対価がそれほど大きくないことから株主に及ぼす影響が少ないためこのような措置が用意されております。なお当然ながら消滅会社側にこのような措置はありません。この簡易合併は要件を満たしている場合でも、(1)消滅会社が債務超過であったり、交付する対価が承継額を超えるなど差損が生じる場合、(2)交付する対価が譲渡制限株式である場合、(3)一定数の株主が反対の意思を通知した場合は簡易合併はできず、原則どおり特別決議を要します。この簡易組織再編が適用されるのは吸収合併以外に、吸収分割、新設分割、株式交換となっております。

 

略式合併

 株主総会での承認決議を省略できる場合として、簡易合併の他に略式合併が存在します。これは相手会社が自社の特別支配会社である場合に承認決議を省略できるという制度です(784条1項)。特別支配会社とは自社の株式を90%以上保有している会社を言います。このような場合は決議が可決されることが確実であり、実際に決議を採る意味がないからです。なおこの場合でも消滅会社が公開会社であり、対価が譲渡制限株式である場合は決議を省略できないとされます(同但し書き)。公開会社が株式に譲渡制限を付ける場合は、定款変更に特殊決議を要します(309条3項2号)。この場合議決権の3分の2以上の賛成に加え、株主の頭数で半数以上の賛成を要します。この場合も同様で、90%以上の議決権を保有していても、頭数要件を満たさない可能性があることから承認決議を省略できないとされます。

 

コメント

 本件でメルコホールディングスは、事業分野の範囲が拡大しすぎたことによる問題点を解消し、長期的な株主価値の最大化を目指すために今回の組織再編を行うとしております。今回の吸収合併で消滅するバッファローはメルコの完全子会社であり、株主はメルコしか存在しないことから合併対価は交付されず、いずれの会社にも簡易・略式合併の要件を満たすこととなることから承認決議は省略されるとのことです。以上のように会社法では組織再編の際には原則として株主総会での承認決議を必要としておりますが、一定の場合にはこれを省略することが可能です。これにより簡易迅速な手続きで事業再編を実現することができます。それぞれの要件や例外、必要な手続きなどを確認し、自社の再編に備えておくことが重要と言えるでしょう。

 

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