M&A総研が5000万円に減資、資本金減少と剰余金について
2024/11/20   商事法務, 会社法, コンサルティング

はじめに

 中小企業向けM&A仲介を手掛ける「M&A総研ホールディングス」は18日、資本金の額を5000万円に減少させる旨発表しました。減少分は全て、その他資本剰余金に組み入れるとのことです。今回は資本金減少と剰余金について見直していきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、M&A総研は取締役会で資本金の額を約8000万円から5000万円まで減少させる旨を決議したとされます。減資の目的は、今後の資本政策の柔軟性及び機動性を確保することとされ、発行済株式総数の変更は行わず、減少する資本金の全額はその他資本剰余金に振り替えるとのことです。12月開催予定の定時株主総会で承認を得、債権者異議申述最終期日は来年1月27日、効力発生日は同月31日を予定しております。同社は純資産額の変動もなく、グループの2025年9月期業績に与える影響も無いとしております。なお同社が発行しているストックオプション(新株予約権)が行使された場合には別途資本金額が変動するとしております。

 

資本金とその減少

 資本金とは、会社の設立または株式の発行に際して株主となる者が会社に対して払い込み、または給付した財産の額を言います(会社法445条1項)。設立時の株式の発行や、募集株式の発行、新株予約権の行使、組織再編の際に対価として株式を発行した場合等に増加するということです。なお出資された額のうち、半分を限度として資本金ではなく準備金に計上することも可能です。(同2項)。このようにして増加した資本金は原則として資本金減少手続きを経なければ減少することはありません。つまり資本金は現実に会社が保有する財産とは切り離された、計算書類上の数字と言えます。資本金を減少した場合、その減少した分は消えてなくなるのではなく、他の数字に変化することとなります。具体的には資本準備金とするか、しない場合は欠損金の填補に充てるか、充てない場合はその他資本剰余金に計上されることとなります。以下資本金減少の手続きを見ていきます。

 

資本金減少の手続き

 資本金減少を行うにはまず、原則として株主総会の特別決議が必要となります(447条、309条2項9号)。例外的に定時株主総会で欠損填補を目的とし、剰余金が生じない場合は普通決議で(309条2項9号かっこ書き)、また新株発行と同時に行い、それによる増加分の範囲で減少する場合は取締役会決議で可能です(447条3項)。決議内容は減少額、準備金等に組み入れる場合はその旨と額、効力発生日となります。そして資本金減少には例外無く債権者異議手続きを要します(449条4項)。これは資本金減少の内容等を官報によって公告し、債権者にも個別に催告するというものです。1か月以上の期間を設定し異議があればその期間内に申し出るよう催告します。なお官報による公告に加え、定款で定めている日刊新聞または電子公告を行えば個別催告は省略できます。その後効力発生日に資本金減少の効果が発生し、その日から2週間以内に登記することとなります。

 

剰余金について

 上でも触れたように減少した資本金はその他資本剰余金に計上することが可能です。会計的に言うと、この剰余金とは、貸借対照表上の株主資本の額から資本金を控除した額を言います。平たく言えば余っているお金と言え、株主に分配することができます。これを分配するには、原則として株主総会の普通決議による必要があります(454条1項)。しかし例外的に一定の要件のもと、取締役会に授権することもできます(459条1項)。その要件は、会計監査人設置会社であること、取締役の任期が1年であること、そしてその旨定款で定めることです。またこれとは別に、定款で定めることによって、1事業年度につき1回に限り、取締役会決議で配当することも可能です。これを中間配当と言います(454条5項)。これには会計監査人や取締役の任期の制限もありません。

 

コメント

 本件でM&A総研は資本金の額を約8000万円から5000万円に減少させるとしており、減少分はその他資本剰余金に振り替えるとしております。12月20日の定時株主総会で承認決議を得、債権者異議手続きを経て、来年1月31日に効力発生となる見通しです。同社は昨年11月にも資本金減少を行っており、当時約6億6000万円に上っていた資本金を5000万円に減少させて税制上の中小企業となっております。以上のように会社の資本金は株主総会決議によって減少させることができます。それにより剰余金として株主に分配することも可能であり、またこれまでも取り上げてきたように1億円未満となれば税制上の優遇措置も受けることが可能となります。しかし一方で会社債権者にとっては会社財産の減少につながることから注意が必要になってきます。また税制措置についても近年は会社の規模に合わない資本金の設定は制度趣旨にそぐわないとの声もあり、制度の見直しも検討されております。自社に合った資本設定を適切に模索していくことが重要と言えるでしょう。

 

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