令和7年4月から引き下げへ、障害者雇用の除外率とは
2024/12/25 労務法務, コンプライアンス, 労働法全般
はじめに
障害者雇用促進法施行令の改正により2025年4月1日から各業種で定められている除外率が引き下げられます。また法定雇用率についても段階的に引き上げられる予定とされております。今回は障害者雇用促進法の法定雇用率と除外率について見ていきます。
障害者雇用促進法とは
障害者雇用促進法とは、障害者の職業生活における自立の促進と障害者の職業の安定を図ることを目的として昭和35年に制定された法律です。国や自治体、厚生労働大臣の責務や雇用促進の方針の策定などとともに障害者の雇用を推進する各種規定が置かれております。具体的には、職業リハビリテーションの推進、障害者に対する差別禁止、対象障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進、紛争解決などが盛り込まれており、職業リハビリテーション推進ではハローワーク等での求人開拓、職業指導、就職後の助言、障害者職業センターでの障害者に対する職業評価や訓練、障害者就業・生活支援センターでの指導や助言がどが規定されております。また事業主における障害者に対する差別の禁止や合理的配慮の提供義務とともに法定雇用率の達成義務や各種調整金や助成金の実施なども盛り込まれます。
法定雇用率
障害者雇用促進法では当初、国や自治体、企業に対して障害者の雇用促進が努力義務として課されておりました。その後1976年改正で法的義務となり、法定雇用率も1.5%とされました。現在障害者雇用促進法では、従業員40人以上を雇用する事業主はすべて障害者の雇用義務が発生し、法定雇用率は2.5%となっております。これは段階的に引き上げられる方針で、2026年7月からは2.7%となり、雇用義務の範囲も従業員40人から37.5人以上に拡大される見通しとされます。なお国や自治体での法定雇用率は現状2.8%、都道府県教育委員会では2.7%とされております。対象となる障害者は、以前は身体障害者と知的障害者のみでしたが、現在は精神障害者も加えられております。身体障害者の場合は「身体障害者手帳」を所持している方で、知的障害者の場合は「療育手帳」を、精神障害者は「精神障害者保険福祉手帳」を所持している方とされます。
除外率とは
上記のように一定数の従業員を雇用する事業主は、一定数の障害者を雇用することが義務付けられます。しかし業種によっては障害者の就業が困難な場合があります。そこでそのような業種については雇用労働者数を計算する際に一定割合で労働者数が控除される制度が用意されております。それが除外率制度です。除外率が設定されている業種は様々ですが、貨物運送、船舶運航、医療、学校など免許や資格等が必要であったり、安全面で懸念がある場合などが考慮されていると言われております。具体的には船舶運航事業で80%、幼稚園等で60%、小学校と道路運送業で55%、石炭・亜炭鉱業で50%、特別支援学校で45%、金属鉱業、児童福祉事業で40%、林業で35%、高等教育、医療、鉄道業で30%、港湾運送業で25%、郵便、鉄鋼、建設業等で20%、貨物運送取扱、非鉄金属精製業等で15%、採石、水運等で10%、倉庫、船舶製造、非鉄金属製造業等で5%となっております。
除外率の算定方法
除外率が設けられている業種では、常用労働者数から除外率分の労働者数が控除され、その数に法定雇用率を乗じて障害者の雇用義務数が計算されることとなります。例えば常用労働者数が1000人で除外率が25%の場合、1000人から25%である250人を控除した750人に法定雇用率である2.5%を乗じて18.75人となります。小数点以下は切り捨てて18人の障害者の雇用が義務付けられます。この除外率が令和7年4月1日からそれぞれ10ポイントずつ引き下げられる予定です。たとえば除外率80%の業種では70%、60%の業種では50%というように引き下げられ、雇用が義務付けられる障害者数が増加することとなります。なお雇うべき法定雇用障害者数に届かない場合、事業主は障害者雇用納付金として不足1人につき月額5万円を納付する必要があります。逆に法定雇用障害者数を超えて雇用している場合は、超過1人につき月額2万9000円が支給されます。
コメント
障害の有無に関係なく、希望や能力に応じて誰もが職業を通じた社会参加のできる「共生社会」実現の理念の下、障害者雇用促進法では全ての事業者に法定雇用率以上の割合で障害者を雇用することが義務付けられております。そして令和5年度以降、対象事業者の範囲と法定雇用率が段階的に拡大される予定となっており、除外率も来年4月から引き下げられることとなっております。昨年12月に発表された厚労省の集計では民間企業の障害者雇用数と実雇用率は過去最高を更新したとされます。しかし法定雇用率を達成している多くは大手企業とされており、中小企業の半数以上は達していないと言われております。今後も採用対象の拡大や障害者が活躍できる業務の創出など国や自治体だけでなく企業に対しても求められていくものと予想されます。自社ではどのような取り組みができるのか、検討し周知していくことが重要と言えるでしょう。
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