グーグル検索表示に東京地裁が差止めを命じる
2012/03/26 法務相談一般, 個人情報保護法, IT
事案の概要
男性の名前を大手検索サイトグーグルで検索すると、サジェスト機能(予測検索表示機能)によって身に覚えがない犯罪行為を連想させる文言が検索候補に挙がり、中傷記事が表示されるという。これにより男性は仕事をやめさせられ、転職も困難になり、プライバシーを侵害されたとして、男性はグーグル米国本社を相手に表示差し止めの仮処分を申し立ていた。これに対し東京地裁が19日に認める決定をしていたことが分かった。
グーグルのような検索サイトでは、検索のため文字入力をすると途中でも予測される単語や補助情報が表示される。これが「サジェスト機能」。
男性は数年前から、会社を解雇されたり内定を取り消されたりしていた。その理由を調べたところ、インターネット上に男性の中傷が広がっていることに気付いた。男性の名前を検索するとサジェスト機能により身に覚えのない犯罪行為を連想される文言が検索候補にあがり、中傷記事が1万件以上表示されるという。
男性は、サイト管理者に中傷記事の削除などを求める訴訟を起こし、請求が認められたこともあった。しかし、すでに中傷記事はインターネット上に拡散しており、個別対応が事実上不可能になっている。そのため、男性はグーグルにサジェスト機能による文言の削除を求めたが応じてもらえず、昨年10月に仮処分を申請に踏み切った。この申請に対し、東京地裁(作田寛之裁判官)が19日付の決定で表示の差止めを命じた。この決定を受け、男性は、22日までに表示を訂正するよう求めた。
今回の件につき、グーグル本社は、単語は機械的に抽出されるだけであるということ、会社の規定上表示停止する事案に当たらないということ、削除権限はアメリカ法人にあり日本の法律の規制を受けないことなど主張しており、現在も表示停止に応じていないという。男性の代理人を務める富田寛之弁護士は、グーグルが今後も削除に応じない場合、裁判所に金銭支払いを求める間接執行などの方法を考えたいと話している。
コメント
グーグルといえば検索サイト大手として有名だが、「ストリートビュー」や3月から導入された個人情報保護に関する新指針のように、プライバシー問題を抱える会社としても有名である。
サジェスト機能は表示は、過去の膨大な検索結果を機械的に処理をして行われ、入力する手間を省いたり、関連情報を探しやすくしたりするためなどに利用されており、利便性が高い。意図的に表示されるものではないため、検索サイトに法的責任を課すことは妥当でないという意見もある。
しかしながら、サジェスト機能によるプライバシー侵害を知った後も予測表示を削除せず放置した場合は、プライバシー侵害につき過失が認めれ、責任を問いうるだろう。
個人情報保護法では、本人から個人情報取扱事業者に対して個人情報の訂正請求や利用停止請求が認められている。検索サイトのサジェスト機能は同法の個人情報に当たらないため同法の適用はない。しかし、インターネットの拡散力や拡散した情報を削除することの難しさを考えると、サジェスト機能についても同法の訂正請求権や利用停止請求権のような法的な請求権を利用者に認めることを考えても良いのではないだろうか。
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