非正規・賃金格差は身分の差
2016/07/01 労務法務, 労働法全般, その他
1.正規雇用と非正規雇用との賃金差
正規雇用と非正規雇用との間の格差が現在、日本で問題となっている。特に、賃金差、すなわち年収の格差が、正規雇用者と被正規雇用者との間で生活水準や人生設計に大きな差をもたらす原因のため、顕著な問題となっている。
正規雇用と非正規雇用の年収
年収ガイド
貧困・格差の現状、背景(~非正規雇用についての基礎知識~)
厚生労働省(PDF)
非正規労働者の増加に伴う課題と政策(論文)
www.ec.kagawa-u.ac.jp/~tetsuta/jeps/no6/Fujii.pdf
香川大学経済政策研究 第6号 2010年3月
(直接リンクが貼れなかったが、興味のある方はこちらのURLでどうぞ)
2.現在、格差が社会問題として受容
2016年2月に、安部首相は、首相官邸で開いた一億総活躍国民会議で、非正規雇用労働者の待遇改善のため「早期にガイドライン(指針)を作り、事例を示す」と表明した。また、2016年5月には、労働契約法20条に基づき、東京地裁で判決が下された(本サイトでも、法務ニュースとして取り上げている)。そして、日本労働弁護団は電話相談「非正規・賃金格差ホットライン」を6月19日に開催することを発表されている。
「非正規雇用労働者の待遇改善」についての会議(平成28年2月)
首相官邸
定年後、非正規雇用で賃金引き下げは違法である(東京地裁判決:2016年5月)
企業法務ナビ(2016年5月20日記事)
電話相談「非正規・賃金格差ホットライン」(日本労働弁護士団)
ヤフーニュース
3.法務が今後対応しなければならないだろう取り組み
企業には、正規雇用者と非正規雇用者との賃金格差是正が、国策としても求められている。しかし、非正規雇用者には正規雇用者とは異なる立場・条件で、初めから雇用されている。そのため、法務担当者としては、企業の方向性に合わせ、非正規雇用者からの訴訟提起を防ぐ視点で、雇用施策のバックアップをしていくことが必要となる。
株式会社セレブレイン社長が語る~企業が取り組むべきポイント
①人事評価制度を導入→高い賃金が得られる仕組みを導入
②双方で行き来ができる登用制度の導入
東洋経済オンライン・記事2016年2月15日
同一労働同一賃金ではなく、同一価値労働同一賃金の考え方へ
Adecoo(アデコ)
4.訴訟の対応の可能性
正規雇用と非正規雇用との格差が社会的にも問題であり、解決のための動きが活発化してきている。また、某法科大学院実務家教員の一意見ではあるが、近年はいわゆる「過払いバブル」が収束してきているため、弁護士などが「非正規労働者の賃金問題にについて積極的に介入することになるだろう」と述べているのを筆者は耳にしている。そのため、今後、非正規労働者を多く雇用してきた企業としては、訴訟が提起されるケースが増加してくると思われるため、法務担当者としてはそれらの様々な問題に対応しなければならない。
ちなみに、現在「賃金」の問題として、既に「残業代の請求」について、弁護士が積極的に関与していると思われる。
正規雇用と非正規雇用の年収
厳選 労働問題弁護士ナビ
非正規労働者と正規労働者との賃金格差が争われた事例(平成26年7月29日奈良地方裁判所判決)他、事件のリンクあり
~奈良市の法テラス奈良の非常勤職員の女性が、日本司法支援センターに対して、常勤職員との賃金の差額(約285万円)等の支払いを求めて提起した訴訟~
ウエストロージャパン株式会社
5.訴訟になる前に…回避策(一つの考え)
主に人事の仕事になると思われるが、法務担当者としては、以下のように他部門と協力して、「会社の問題」として取り組むことが考えられる。
(1)雇用前・契約更新時
非正規雇用者を正規雇用者と賃金や福利厚生の面で異なる条件で直接雇い入れる場合や、再度の契約更新時のタイミングで
①現在、世間では賃金格差など、条件の格差が問題になっていることを告げ、
②当該企業における条件の理由の説明を行い、
③その説明について、説明があったことの確認や、納得した上で雇用される旨の承諾を書面でもらい、証拠として残す。
といった方法が考えられるため、法務担当としては、そのように会社のに対してアドバイスすることが考えられる。
なお、①を自ら告げることにより、③の「承諾」が被用者の真意であることを裏付けられるため、後になって、承諾をした被雇用者が「騙された」と主張することを防ぐことができる。
(2)雇用契約期間中(主に人事の仕事になると思われる)
①非正規雇用者を既に雇用しているのであれば、雇用期間が終了した後、訴訟を回避するために、「条件」に至った理由の説明を徹底すること。
②また、非正規雇用者が不満を感じる点は、雇用者から非正規雇用者に対する差別的扱い・態度にも理由があるとの指摘もある。仕事や企業に対する不満は人間関係も多く影響するため、職場環境の改善が必要である。
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